あの国。
さて、こいつらをどうするか。
ちらりと倒れている連中を見て、私はため息をついた。
黒い霧とは無関係のようだから、ギルドに突き出しても仕方がない。
真珠国の御神体や虹雲の卵が盗まれた事は、表向きには公になっていない。
大体、実行犯だった黒のキャラバンの連中はもう捕まえてギルドに引き渡してしまったしな。
んー?
だからといって、世界を滅ぼそうとしていたやつらを野放しにするわけにもいかない。
「真珠国に連れていくか……」
お稲荷さんに処遇を決めてもらった方がいいか。
御神体の事もあるし。
「おこん、『創成魔法』。でっかいペットゲージ」
「にゃん!」
がしゃこんっ、と音を立て、巨大なペットゲージの中に忍者達を閉じ込めた。
「キング、『空間転移』」
キングがぱちりと目を閉じると、微妙な浮遊感と共に私達は真珠国へと移動した。
驚くお稲荷さんに、これまでの経緯を説明すると、深いため息をついた。
「……こちらに流れ着いた当初、彼らの働きで我々は魔物に喰われる事もなく、無事に生活を送れていました」
確かに、商人や船乗り達と違い、どうにか魔物と戦う事も出来ただろう。
「ですが」
暗い目をして、お稲荷さんは言葉を続けた。
「自分達のためだけに、この世界を滅ぼそうとした事」
そして、御神体を盗み出すように仕向け、なおかつ破壊しようとした事。
「赦すわけにはまいりません」
何かを覚悟した顔で、お稲荷さんはそう言った。
「……」
あの国の神様は、情熱的で愛らしく、そして時に残酷だ。
「……分かった。あとは任せる」
「はい」
こっくりとお稲荷さんは頷いた。
「船はどうするの?」
魔導で造った船らしいから、破壊してしまった方がいいだろうか。
存在を知ったら利用しようとする連中が出てきてもおかしくないし、ここは一発うちの猫達に粉々に……。
「つかささんが、もらってください」
「え?」
「それが、一番安全だと思います」
無限収納に入れておけば、確かにほかの誰にも触れられないが。
んー?
そういや、魔力で動くんだったな。
下手に魔法をぶつけたら、変な方向に起動してしまうかもしれない。
いや、でも、大きくなったりゅうたろうにぷちっとしてもらえばいいのでは……?
「お願いします」
深々とお稲荷さんが頭を下げた。
「……」
多分、お稲荷さんも複雑なのだろう。
もしかしたら、あの国へ帰れるかもしれない。
どこかに、諦められない部分があるのか。
粉々にしてしまった方が、未練を断ち切れると思うのだが。
いや、お稲荷さん自身が壊すと決めるまで、私が預かっておこう。
「うん、分かった」
私はにっこりと笑ってみせた。




