力。
ん? 一人だけ、気を失わなかったやつがいるな。
あー、さっきの犬派のやつか……。
まぁ、いい。
「世界を滅ぼす方法は?」
「……」
口をぱくぱくさせているが、言葉を発しようとはしない。
意思でねじ伏せているようだ。
しぶといな。
「よつば」
「……にあん」
よつばが不満そうに鳴いた。
いや、うん。男の人が嫌いなのは分かっているけどね。
「あとで、おやつあげるから。それに、好きなだけもふってあげるし」
よつばは、抱っこは死ぬほど嫌いだが、何故か撫で回されるのは好きなのだ。
「にあん!」
忘れるなよ、と言わんばかりに一声鳴くと、よつばはまだ頑張っている忍者の足に前足をかけた。
くりん、と首を傾げ、絶妙な角度で男を見上げる。
「にぁぁぁん?」
「……!」
よし、落ちた。
よつばの頭を軽く撫で、男に向き直る。
「もう一度聞くけど、世界を滅ぼす方法は?」
「真珠国……、御神体……」
とぎれとぎれなのは、まだ抵抗しているからだろう。
よつばのあざとさ全開の「魅了」をくらっても、完全に落ちないところをみると、筋金入りの犬派なのかもしれない。
「力……、神に成る前……、解放……」
んー?
こいつらの最終的な狙いは、真珠国の御神体だったわけか。
……神に成る前に、その力を解放させるつもりだったのか。
まさか。
こいつらが、黒のキャラバンに御神体を盗み出すようにそそのかした……?
元々、真珠国の出身なのだから、御神体の事も、その力も知っていただろう。
神に成るだけの力を解放すれば、確かに世界を滅ぼせるかもしれない。
「……エルフ達の、虹雲の卵は?」
「予備……」
やっぱり、こいつらか!
御神体だけでは力が足りなかった時か、うまくいかなかった時のためかは分からないが、虹雲の卵をスペアとして利用するつもりだったのだろう。
神様達は運命神の仕業だと思っていたようだが、人間の企みだったようだ。
ドラゴンちゃんが虹雲の卵を奪い、エルフ達が間違えて御神体を奪った事で、計画が狂ったという事か……。
「どうやって、帰るつもりだった?」
遠い遠い、あの国へ。
「船……、魔導……」
ふむ、魔導で造った船か。
「動力……、高い、魔力……、猫……」
「猫!?」
うちの猫達の事か!?
つまり、船を動かすためには高い魔力が必要で、そのためにうちの猫達を捕らえようとしていた事か……。
「……」
そんな、身勝手な理由で……。
私はふらふらと歩いて、落ちていた大鎌を拾った。
手が白くなるほど、大鎌の柄を強く握る。
「……………………」
どんっ、と背中に衝撃を受けて、我に返った。
いつの間にかキャットハウスから出てきていた、通常サイズのりゅうたろうが肩に飛び乗ろうとしたのだ。
りゅうたろうはふんふんと鼻を鳴らし、私の顔をのぞき込んだ。
「うん、ごめん。大丈夫……」
大鎌を無限収納にしまって、りゅうたろうの頭を撫でる。
「ありがとうね、りゅうたろう」




