覚醒。
チャビのおかげで、世界が滅びるのは防げた。
たが、くぅの怒りが完全に収まったわけではない。
「うなぁおぅぅ!」
忍者達を睨み付け、再び雄叫びをあげた。
「……?」
なんだろう、妙に息苦しい。
忍者達は刀を取り落とし、膝をついた。
完全に戦意を失っている。
くぅ、何をした……?
確認すると、新たなスキルが追加されていた。
「威圧」 圧倒的な力の差により、相手の戦意を喪失させる。
「……」
ダメなやつだ、これ。
完全に魔王だ!
もはや、くぅに勝てるやつなんて、この世界のどこにもいない。
まぁ、いい。
キャットハウスから、よつばを呼び出す。
「よつば、『魅了』」
くりん、と首を傾げたよつばが甘ったれた声で鳴いた。
「にぁぁぁん?」
途端に、忍者達がとろりとした表情になった。
ん? 一人だけ様子がおかしいやつがいるが。
「お、俺は、犬派なんだぁぁぁ!」
……この状況で、何を主張している!
いや、待て。
「混乱」しているのか?
くぅの「威圧」によつばの「魅了」がプラスされた上に、本人が「精神耐性」を持っていたせいで妙な方向にいってしまったようだ。
あとは、まぁ、本当に犬派なんだろうな。
別にいいけど……。
ため息をついた瞬間、身体中が痛みを訴えた。
「いっ……!」
そういや、傷だらけだったな。
「チャビ、『回復』して」
私の足にすり寄りながら、チャビがごろごろと喉を鳴らす。
同時に、傷と痛みが消えた。
「ありがとうね」
チャビの頭を撫でると、満足そうに目を細めながら私に頭突きをしてきた。
さてと。
忍者の連中を振り返る。
「どうやって、世界を滅ぼすつもりだった?」
「……」
へぇ? よつばの「魅了」が効いているはずなのに答えないのか。
たいした精神力だ。
とことことチャビが近づいてきた。
「チャビ?」
「……うぁぁぁぁおぅぅぅ!!」
チャビが雄叫びをあげた。
「チャ、チャビくん……?」
普段はおっとりしているチャビが、まるで猛獣のような形相をしている。
ぎらぎらとした目で、忍者達を睨み付けた。
……そうか、チャビも実はキレていたのか。
「うぁぁぁぁおぅぅぅ!!」
空気が重い。
ばたばたと忍者達が気絶していく。
スキルを確認する。
「殺気」 強烈な殺意をぶつけ、意識を奪う。
殺意、ですか……。
そりゃ、くぅと姉弟だものな。
要素はあったんだろうけど。
いや、実はキレていたのに、今までおくびにも出さなかったチャビの方が、魔王の素質はあったのかもしれない。
……よくも、うちの癒し系を魔王に変えやがったな!
意識を失っている相手にアレだけど、蹴っても許されるよな!?




