監視。
結局、本を調べるだけで五日もかかってしまった。
事務処理スキルを使えないのが痛かった。
うー、目がしょぼしょぼする。あとで、チャビに「回復」をかけてもらおう。
それにしても、古代神語というのは言葉自体に力が宿っているのか。
使いこなせれば、確かに力にはなるのだが。
文法やらなにやらに統一性がなくてややこしい。
それに、人間には発音が難しい。
私も読むのが精一杯だ。
使われなくなっていったのも、当然の事だろう。
魔導の塔の魔導士も、流暢に使いこなしていた様子でもなかった。
真珠国から別れた人々も、自分達で話すところまではいってないみたいだしな……。
せりがキャットハウスから顔を出した。
不機嫌そうな顔で、ぶんぶんとしっぽを振っている。
せりの視線の先にいたのは、学生風の一団だ。
全員、黒い髪に黒い目で真珠国の出身だという事は一目で分かる。
そういや、図書館で見かけたな。
学生風だったから気にしていなかったが。
……見張られていたのか。
まぁ、それも当然か。
彼らほどではないが、私も黒髪といっていい色だ。
少なくとも、真珠国の血を引いている、と見た人は思うだろう。
そんな人間が連日図書館に通いつめて古代神語の本を読み漁っていたら、警戒されても仕方がない。
ましてや、彼らは世界を滅ぼそうとしているのだから。
異分子を警戒するのは当然だ。
さて、どうするか。
このまま知らんぷりをして泳がすか、それとも、いっそのことこちらから接触してみるか。
んー?
せりの様子からすると、今のところ害意はなさそうだ。
彼らは、ただの見張りなのだろう。
なら、向こうが動くまでは様子見でいいか。
とりあえず、最初の予定どおりギルドに行くとするかな。
いくら古代神語による呪いに力があったとしても、いきなりクラーケンを操ろうとは思わないはずだ。
どれくらいの効力があるのか、まずは小型の魔物から試し、徐々に力の強い魔物に変えていく。
となると、それなりに力量がある人間が必要となる。
トパーズのギルドは、ほとんどが学生向けの簡単な依頼が多い。
凶暴な魔物を退治できる人間は限られている。
その中から、真珠国に関係のありそうなやつを抜き出せばいい。
今度は事務処理スキルが使えるから、そんなに時間はかからないだろう。
その前に、何か食べるとするか。




