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一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。 もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?  作者: たまご
第七部 《ことわり》をはずれたもの

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流れ着いた人々。

「申し訳ありませんでした」


私の話を聞き、お稲荷さんは深々と土下座をした。


「もしや、とは思っていましたが……」


「何か知っているの?」


みうが「とおみ」で見てくれたあと、私達はすぐに真珠国へとやってきた。


お稲荷さんは姿勢を正し、重いため息をついた。


「我らの国の成り立ちはご存知ですよね?」


「うん、絵本で読んだ」


こちらの世界では、わりと有名な絵本らしいが。


「絵本、ですか……」


「?」


「きっと、それには綺麗事しか書かれていないのでしょうね」


「……」


真珠国の始まりは、商人の乗った船が嵐に巻き込まれ、この国に流れ着いたというものだ。


皆で力を合わせ、苦労しながら故郷の味を再現し、やがて国へと発展していく。


そんな話だった。


「苦労などという生易しいものではありませんでした。泥水をすするような思いをし、やっとここまできたのです」


「……」


真珠国の祖先は、私と同じ世界かは分からないが、あの国の出身だろう。


つまり、ただの人だ。


エルフやドワーフのように、長命なわけでもない。


ドワーフには、頑丈な身体と高い戦闘能力。それに、特殊な技術。


エルフには、精霊の加護や魔法。精霊樹や虹雲の守護。


魔導の塔は、高い魔力と知識を持っていた。


だが。


商人であった真珠国の祖先達は、この世界の魔物と戦う術もなかったはずだ。


言葉も、おそらく通じなかっただろう。


「ここにいるのは、この世界で生きる事を決めたもの達です」


けれど、とお稲荷さんは言った。


「帰りたい、と願うもの達を止める事は出来ませんでした」


残してきた、大切な人々。


懐かしい、あの風景。


帰りたい、帰りたい。


「……」


私は、猫達さえ一緒ならばよかったけれど。


帰りたいと願うのは、仕方がない事だとは思う。


だが、魔導の塔のように歪んでしまったものを認めるわけにはいかない。


「その人達は、今、どうしているの?」


「分かりません」


お稲荷さんは、小さく首を振った。


「我らと袂を分かって以来、行方がしれないのです」


そう言ったお稲荷さんは、ひどく疲れたような顔をしていた。


人々を、神様でさえ代替わりするこの国を、お稲荷さんはずっと見てきたのか。


「ただ……」


お稲荷さんは、真剣な目で私を見た。


「この世界が消えてしまえばいいのだ、と言っておりました」










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