伝承。
みうが、いい香りのする香草でお茶を入れてくれた。
ハーブティーみたいな感じか?
「それで、話というのは?」
長と、おそらくエルフ達のリーダー格にあたる数人が私の話を聞いてくれる事になった。
……一人だけ、妙に怯えた様子の若いエルフがいるのだが。
もしかして、黒のキャラバンの時にうちの魔王様を見た一人か?
さて、どこから話したらいいものか……。
まずは、エルフが異世界から来た人々だという事を説明した方がいいかな。
「それならば、知っている」
驚くかと思ったが、エルフの長はあっさりと頷いた。
「伝承に残されているからな」
エルフ達に代々語り継がれる、いうなれば創成神話のようなものがあるらしい。
それによれば、エルフ達は滅びゆく世界から、精霊樹の導きにより安寧の地、つまり翡翠の森へとたどり着いたのだそうだ。
そうか、エルフは自分達がほかの世界から来た事を知っていたのか……。
エルフはどちらかといえば排他的な種族なのだが、その事が関係あったのかもしれない。
「それで、運命神が我々を滅ぼそうとしていると?」
「エルフだけじゃなくて、ドワーフやほかの世界から来た全ての種族を消したいらしいです」
私の言葉に、長達は難しい顔をして考え込んだ。
「なら、こちらから戦いを挑んでは?」
若いエルフが勢い込んで言った。
「我らエルフには、精霊の加護があります!」
……やっぱり、血の気が多いのがいたな。
「実際に動いているのは運命神ではないでしょうから、私達が対応すべき相手はそちらの方だと思います」
「だが……!」
私の肩に乗ったままのりゅうたろうを見て、若いエルフは一瞬怯んだ。
りゅうたろう、どんな顔しているんだよ……。
「運命神は世界の半分を消し去るつもりでいるらしいので、エルフだけの問題ではないんです」
それとも、自分達だけが助かればいいと?
そう言うと、若いエルフはそんなつもりじゃ、ともごもご言いながら引き下がった。
まぁ、私の意見に賛同したわけではなく、単に猫達に怯えただけだと思うが。
こら、くぅ! 勝手に出てこない!
別に、ここで戦ったりしないからな!?




