翡翠の森の住人。
あとの事はサナ達に任せ、私達は翡翠の森に行く事にした。
ドラゴンの山を前に、ギルドマスターが頭を抱えている。
特急依頼の報酬はサナ達に支払われるが、ドラゴンの買い取りは別件になるらしい。
退治でさえ高額になる上に、くぅやりゅうたろうが倒したドラゴンは状態がいいので素材としての金額が上乗せになるのだそうだ。
ただ、尋常な数ではないドラゴンの報酬を一介のギルドが即金で払えるはずもなく。
分割払いにさせてくれ、とギルドマスターに頼み込まれた。
今まで貯めたお金が十二分にあるので報酬は必要ないと言ったが、それではほかのギルドや冒険者に示しがつかないと怒られた。
何で、私が怒られるんだ……。
結局、お金が必要になったら、いつでもガーネットのギルドから必要な分だけ受け取れるという事で話はついた。
このあと、剥ぎ取りや解体、運搬などもあるが、その辺の事はギルドに丸投げでいいだろう。
さて、翡翠の森に行かなくては。
「キング、『空間転移』」
翡翠の森に行くと、嬉しそうにみうが迎えてくれた。
「つかさ、来てくれたんだ!」
「ごめん、今日も用事があって……」
遊びにきたわけではないと言うと、みうは不満そうに頬をふくらませた。
「ご飯は? 食べていくよね?」
ご飯くらいなら、いいかな。
問題は、よつばが何かやらかさないかだが……。
「大丈夫。ワイルドボアがたくさん獲れたから」
みうがにこにこして言った。
こちらの世界のエルフは、普通に肉も食べる。
ただし、家畜の肉や畑で獲れた作物は基本的には口にしない。
狩猟で得た肉や採取した果物に、恵みを感謝しながら食べるのだ。
塩などの調味料や薬など、どうしても必要なものは翡翠の森でだけ入手できる珍しい薬草と物々交換をするらしい。
それも、取り引きするのは精霊に認められた相手だけなので、ごく限られた量しか出回らない。
まぁ、私達には好きなだけ持っていけ、と言ってもらっているが。
「長、みうのお父さんに話があるんだけど」
「魔物のこと?」
前回、翡翠の森を覆った黒い霧は、よつばの「解除」と虹雲の降らせた雨で完全に消し去った。
あのあと、やはり魔物が現れたらしい。
しかし、たいした数ではなかったようで、エルフ達で退治したのだそうだ。
んー?
ほかの所は、黒い霧が出たあとに大量の魔物が襲ってきたはずだが。
黒い霧をほぼ発生と同時に消したせいか、精霊がいるおかげなのか、虹雲が守護しているからなのか。
エルフは、ちょっと特殊だからなぁ……。
まぁ、無事だったのなら、それでいいか。




