ドラゴンの群れ。
炎鉱石の採掘場に移動すると、すでに黒い霧は消えており、すぐ近くまで魔物の群れがせまっていた。
サナ達が、それぞれの武器をかまえた。
「戦えるやつは参加しろ!」
ドワーフ達も斧や剣などをかまえる。
彼らは鉱夫だが、ドワーフは体が頑丈でもともとの戦闘能力が高い。
せりが歯をむき出し、毛を逆立て、最大限の警戒をしている。
まさか……。
地上から迫ってくる魔物達とは別の一団が、空から近づいてくるのが見えた。
ドラゴンの群れだ!
「つかさ、ドラゴンはまかせていいか?」
紅く光る大剣を握り直し、ナルシが言った。
「当然!」
「さっすが、《竜殺し》」
槍をかついだサナが笑う。
それを言うな、それを!
ドラゴンの群れが襲ってきた場合、冒険者でも逃げ出すのが精一杯だ。
だが。
猫達、特にくぅはドラゴン狩り放題という状況に目を輝かせていた。
「りゅうたろう、ドラゴンちゃんと空から攻撃」
大きくなったりゅうたろうを背中に乗せて、ドラゴンちゃんが舞い上がる。
「せりは『気配察知』を続けて」
今まではなかったが、増援がくる可能性も捨てきれない。
「チャビは、怪我をした人がいたら『回復』」
ドラゴン狩りに参加出来ないのかと、チャビは少しばかり不機嫌そうだ。
「手が空いたら、攻撃していいよ」
だから、お願いね? とチャビの頭を撫でた。
「よつばは、地上の魔物を『魅了』して」
よつばは、一度狩って以来ドラゴンには興味がない。
美味しくなかったらしい。
……まぁ、美味しかったら、今頃ドラゴンちゃんのしっぽの先くらいはなくなっていただろうから、それで良しとしておこう。
くぅは、そわそわしながらドラゴンが近づいてくるのを待っている。
りゅうたろうが、ドラゴンちゃんと群れの先頭へ仕掛け始めた。
臆病なドラゴンちゃんも、りゅうたろうと一緒ならドラゴンの群れにも立ち向かえるらしい。
「りゅうたろう、こっちに誘導して!」
地上で戦うサナ達やドワーフを巻き込まないように、採掘場の端までドラゴンの群れを移動させたい。
りゅうたろうが鼻先を引っ掻き、ドラゴンちゃんがしっぽを羽に当てたりして、ドラゴンの群れを挑発している。
まんまと挑発に乗ったドラゴンの群れは、くぅ達が待ち構えている方へとやってきた。
「福助、おこん、キング、くぅ。ドラゴンを狩るよ!」
声をかけると、猫達はわくわくしているようだった。
「にゃおおお!」
くぅがご機嫌な様子で、鳴き声をあげる。
……何か、少しだけドラゴンが気の毒になってきた。




