結果オーライ。
「運命にさえ囚われない、気まぐれで、自分勝手なものが、この世界には必要だったのさ」
それで、猫なわけか……。
ん? ちょっと待て。
「この世界の猫じゃダメだったの?」
「ああ、こっちの猫は生まれた時、いや、その前から《ことわり》に組み込まれてしまっているからねぇ」
それを書きかえるだけの影響力がなかったのさ、とミーコさんはやれやれという風にため息をついた。
それで、たまたま目の前で事故にあったのが、個性豊かな猫達と暮らしていた私だった。
昔、一緒に暮らしていた子供だったのは偶然だった。
そして、こちらの世界に猫達と一緒に転生させたという事か。
なるほど。
もしかして、猫神が色んな世界を行き来していたのは《ことわり》を書きかえられる猫を探していた……?
ん?
そういや、さっきから女神様は一言も話してないな。
ちらりと見ると、女神様はぽかんとした様子で話を聞いていた。
……あの様子だと、女神様は何も知らされていないようだ。
「何で、私達の世話を女神様がする事になったの?」
自分の話だと気づいて、女神様がはっとした顔になった。
「ああ、幸運の女神はなんというか……」
ミーコさんが、言葉を濁した。
「いや、あちらの世界でいうところのドジっ子というか……」
「……」
女神様、神様達にもポンコツ扱いされていたのか……。
「ただ、不思議と全てがうまくいくようになっていての」
「そこが、幸運の女神たる所以じゃからのう」
火の神様達が笑って言う。
「実際、そうなっただろ?」
海神様が私を見て言った。
「え?」
「猫達が逃げ出したから、つかさは元の姿と記憶を持って、この世界に転生する事になったんだしねぇ」
そのおかげで、《ことわり》の影響を受けずにすんだという事らしい。
それどころか、逃げた猫達がやらかしたからこそ、この世界の《ことわり》を書きかえ始める事が出来たのだそうだ。
言われてみれば……。
よつばがオパール王国の食糧を食い荒らしたから、魔物の大発生を未然に防げている。
それだけではない。
ドラゴンちゃんやクラーケンが襲ってきた現場に居合わせたのも、猫達を探していたからだ。
ラーラ達の住むラピスラズリに行ったのも、キングが逃げ回っていたから。
そして、くぅが狙われていたから魔導の塔にも行き、「とおみ」の力を持つエルフのみうを救う事が出来た。
つまり、女神様のやらかしと、猫達の気まぐれで、この世界は運命神の書きかえてしまった《ことわり》からはずれる事が出来たのか。




