世界。
「え、えーと、ミーコさん……?」
「ああ、こっちで会うのは初めてだったかい?」
ころころと猫神様(ミーコさん?)が笑う。
「時折、様子はのぞいていたんだけどねぇ」
「……やっぱり、猫神様なの?」
「まぁ、そうだけど、ミーコでいいよ」
気に入っていた名前だったし、と本人(本猫? 本神様?)が言うので、ミーコさんと呼ばせてもらう事にした。
「まずは、あたしの事から話しておこうか」
違う世界を気まぐれに行き来するミーコさんは、十数年前に、たまたま私の家にいたらしい。
まぁ、神様には一休みするくらいの事だったらしいが。
確かに、少しというか、だいぶ猫離れした猫ではあったが、まさか神様だったとは……。
あれ?
「こっちの世界に転生させてくれたのって、ミーコさんなんだよね?」
「ああ、そうだよ」
目の前で猫をかばって車にはねられたのが、あの時の子供だったとはねぇ、とミーコさんはやれやれという風にため息をついた。
「……運命かと思ったよ、皮肉な事に」
「あいつが聞いたら、複雑だろうな」
海神様が笑って言った。
「?」
何の話だ?
ちらりと女神様を見ると、私と同じように首を傾げていた。
「説明をした方がいいじゃろう、猫神」
「ここまできたら、知っておくべきではないかの」
「そうだねぇ」
ミーコさんは、じっと私の顔を見た。
「まずは、この世界について話しておこう」
「あ、うん」
「この世界のほかにもいくつもの世界があって、それが並び、絡み合い、互いに影響を及ぼしあっているんだよ」
んー?
あっちやこの世界のほかにも、別の世界があるわけだな。
まぁ、猫神は色々な世界を行き来しているって事だったし、不思議な話でもないか。
「この世界は特に影響を受けやすくてねぇ、別の世界から迷い込んでくるもの達もいるのさ」
ああ、真珠国とかか。
「エルフやドワーフも、元は違う世界の住人だったのじゃ」
「それと、魔導の塔の連中もだな」
…………は?
いや、エルフとかは分かるような気もするけど。
魔導の塔が異世界から来ていた!?
「最初は、元の世界に戻るための方法を探していたらしいんだがな……」
海神様がため息をつく。
「いつの間にか、手段や目的が歪んでしまったらしい」
ぽかんとしているところをみると、女神様も知らなかったようだ。
ふるき神々しか知らないという事か。
「わらわは、違う世界のもの達を面白いと思ったが」
火の神様はドワーフ達の住む火山都市ガーネットに本殿があるし、そうなんだろうな。
「それが、気にくわんという神もおるのじゃ」
「……」
みんな好きで来たわけでもなさそうだし、そんな風に思われても困るだろう。
まぁ、こっちの気持ちとかはどうでもいいんだろうけど。
「今回の騒ぎも、元はそれが原因での」
「!」
黒い霧は、どこかの神様のせいだったのか!?




