行き先。
「おう、お疲れさん」
ターコイズに戻ると、ギルドマスターがにかっと笑って出迎えてくれた。
「町と村、全て無事に終わりました」
多少の怪我人は出たが、それ以上の犠牲は出さずにすんだ。
チャビの「回復」で、その怪我人も今は完治している。
「ただ、後始末が……」
私は顔をしかめながら言った。
退治した魔物が、そのままの状態で放置されている。
残っている冒険者達は万が一に備えて警戒に当たっているし、町や村の人達は復興に忙しい。
「ああ、その辺の事は街の代表者とも話し合っている」
もはや、ギルドだけでは対処しきれないと判断したらしい。
「それと、ほかの国や街とも連携を取る方向で進んでいる」
それはいいのだが。
「それ、私に言っていい話ですか?」
そういう話は、お偉いさん達の話し合いがある程度進んでから、現場に知らされるのが普通だと思うが。
「あながち、あんたに関係ない話でもないからな」
「?」
「みんな、《竜殺し》に来てほしいのさ」
なるほど。
私達はフリーで冒険者をやっている。
特定のどこかに所属しているわけではなく、今もたまたまターコイズにいただけだ。
騎士団や自警団に、プラスの戦力として欲しいわけか。
「王族や貴族の専属に、って話も出ているらしいぞ」
「……」
私の顔を見て、ギルドマスターはがははと笑った。
「そういう顔をすると思ったぜ」
いや、だって、何で一番安全な所にいる連中を守らないといけないんだよ。
「これから、どうする?」
正直、うちもずっといてほしいがな、とギルドマスターは言った。
「……」
ターコイズには、大陸一の規模を誇るギルドがある。
冒険者の数もほかよりは多いはずだ。
ギルドマスターや職員さん達も頼りになる。
「戦力の足りなさそうな所に行こうかと」
「妥当だな」
さて、どこから回るか。
「じゃあ、神様の加護がない所から行ってやれ」
神様の本殿がある国や街は、ほかよりも強力な結界が張られている。
国によって違うが、神様を守るための組織もあるらしい。
ある程度は、自分達で防げるはずだ。
「でなきゃ、争い事が苦手な神様の所か」
そう言えば、農耕神様は苦手だと言っていた。
多分、女神様も苦手だろうけど、結界は得意だと言っていたし、何かあればスマホに連絡をよこすだろう。
んー?
火の神様の所は大丈夫だろう。
海神様は、港町のほとんどが信仰している。
……真珠国か。
まだ、御神体は神様になっていない。
お稲荷さんも戦うのが得意そうには思えない。
まずは、様子を見に行ってみるか。




