ギルド。
ターコイズのギルドに戻って報告すると、受付のお姉さんは顔色を変えた。
「黒い霧が魔物を引き寄せる……?」
「多分だけど」
私が調査に向かった村以外は確認が取れないが、おそらく間違いないだろう。
「ギルドマスターに報告を……」
「大丈夫だ。聞いていた」
ここのギルドマスターは、いかついおっさんだ。
現役冒険者の頃は、巨大な斧をぶんまわして戦っていたらしい。
「職員に徹底通知! 非番の連中も呼び出せ!」
ギルドマスターの言葉に、職員さん達が動き出す。
「よそのギルドに至急連絡を!」
「転移魔方陣、使用できます!」
「近くの町には早馬を使え!」
「緊急以外の依頼、一時差し止めします!」
「村の調査を優先させろ!」
私はあっけに取られて、職員さん達の仕事ぶりを眺めていた。
ギルドマスターは、にかっと笑ってみせた。
「これは、俺達の仕事だ。まかせろ」
振り返って指示を続ける。
「結界を張れるやつに声をかけておけ!」
「治癒師、手配します!」
さすがに大陸一規模の大きいギルドだ。
無駄な動きをしている人は誰もいなかった。
もっとも、それだけ慣れているという事でもあるが。
何かあった時のために、私達は待機しておいた方がいいだろう。
……そうだ。
今のうちに、猫神様の神殿に行っておくか。
ターコイズには、確か小さな神殿があったはずだ。
ギルドの職員さんに一声かけ、私達はその場を離れた。
街の中心部から少し離れた場所に、猫神様の神殿があった。
ここでもやはり、猫の置物がたくさん供えられていた。
私は小さな猫の絵をお供えした。
屋台で見かけて、昔飼っていたミーコさんに似ていたから、つい買ってしまったものだ。
売っていたお兄さんが、猫神様の加護があるよ、と笑いながら言っていた。
ラーラ達が、無事でいますように。
それから。
「ラーラ達の行方を知っていたら、教えてください」
そう言って、ぺこりと頭を下げた。
気まぐれに違う世界を行き来しているという猫神様が、この世界にいてくれればいいが。
たくさんの祈りの中から、私の声が届く事を祈るしかない。




