霧と魔物。
「あ、《竜殺し》の……」
「……」
猫の人の方がましだったと思う日が来るとはな。
まぁ、いい。
「魔物の件で確認したい事がありまして」
人を集めてほしいとお願いした。
狩りや、近くの街の市場に商売で出かけている人達をのぞいて、ほとんどの人が集まってくれた。
「お聞きになりたい事とは何でしょう?」
「魔物が出たのはいつ頃ですか?」
「えーと、あれは……」
「最初に見かけたのは、あなたが来てくれた日より二日くらい前です」
なるほど。
二日くらいなら、この村には柵があるし持ちこたえられても不思議ではない。
「連絡が取れなくなったのは、もっと前ですよね?」
「それは霧が出て村の外に出られなくなったせいで、魔物が理由ではなかったので……」
やはり、霧が出ていたのか!
詳しく話を聞くと、霧が出たのは魔物が出る数週間前の事だったらしい。
触れた村人が寝込むようになり、みんな村の外に出られなくなった。
霧がようやく消えて、ほかの町に救助を求めに行こうとしたら、魔物の群れが村を取り囲んでいたという事だった。
やはり、あの霧は《よくないもの》だったか。
そういえば、寝込んでいる人達もいたな。
んー?
よつばが「解除」出来なかったのに、チャビの「回復」は効果があった。
霧そのものには、そこまで人を害する力はないという事なのか?
霧は、魔物をおびき寄せるためのもの……?
「霧は、村の中には入ってこなかったんですか?」
「ああ、それはオババのおかげです」
「一昨年亡くなった呪い師のオババが、自分がいなくなったあともこの村を守れるようにと」
村をぐるりと囲むように、まじないをかけてくれたのだそうだ。
柵は、元々そのまじないを守るために作ったものだったらしい。
「そのおかげで、霧は村の中には入ってきませんでした」
「助けが来るまで魔物も防げましたし、オババには感謝しています」
「……」
「もちろん、あなたにも大変感謝しています」
黙りこんだ私に、村人達は慌てて言った。
そのオババがどのくらい力のある呪い師だったかは分からないが。
少なくとも、あの霧は結界のようなものがあるところには入ってこれないという事だ。
ラピスラズリや翡翠の森との事を合わせて考えれば、ほぼ間違いないだろう。
やはり、霧そのものには、それほど力はないのかもしれない。
ただし、消す方法は限られているという事か。
そして、触れたものは寝込み、霧が消えた頃に魔物が現れる。
……魔物に襲われた村は、なすすべもなく蹂躙されたのか。
「……」
ギルドに、早く報告しなくては。
霧が出る限り、犠牲者が増え続ける!




