違い。
福助の事は、いったん置いておくとして。
ほかの冒険者の報告書を確認するため、私達はターコイズのギルドに戻った。
よし、久しぶりの事務処理スキル発動!
……。
…………。
そこには、目を覆いたくなるほどの惨状が記されていた。
破壊された家。
踏み荒らされた畑。
食い散らかされた死体。
ほかの冒険者達が向かった村は、そのほとんどが全滅していた。
数少ない無事だった村は、盗賊に襲われていたので、冒険者達が退治したという事だった。
つまり、魔物に襲われた村は全滅しているという事だ。
「……?」
私が調査に向かった村は、全て無事だった。
何が違う?
肩乗りサイズのりゅうたろうが、報告書の端にちょいちょいとじゃれ始めた。
退屈してきたらしい。
「りゅうたろう、ダメだよ」
……そうか、猫だ。
私達とほかの冒険者では、移動速度が違う!
最近は、キングの「空間転移」ばかり使っていたから忘れていた。
普通は馬車などで移動して、そのあとは徒歩で移動する。
私達は依頼を受けたその日に、村まで移動できる。
……ほかの冒険者達は、間に合わなかったのか。
いや、待て。
どうして、私達は間に合った……?
移動速度の事はともかく、依頼が出るまで時間がかかったはずだ。
その間に魔物が襲ってこなかったとは考えにくい。
実際、私達が最初に調査に向かった村は大勢の怪我人が出ていた。
んー?
冒険者でさえ手こずるような魔物の群れに、村人が数週間も持ちこたえられるか……?
確認してみるか。
報告書を片付け、ギルドを出た。
入り口で、調査の依頼から帰ってきたらしい冒険者達とすれ違った。
みんな、疲れきった表情を浮かべていた。
「……」
また、間に合わなかったのか。
全ての国や都市で同じような事が起こっている。
ラーラ達の行方も分からない。
落ち着け。
一度に全てを解決するのは無理だ。
「キング、『空間転移』」
今、出来る事をしなければ。




