契約。
福助のまわりを、何かきらきらしたものが漂っている。
「風の精霊達も、力を貸してくれるようだ」
なら、おもいっきりいこうか。
「福助、全力で『風魔法』! 霧を吹き飛ばして!!」
「にゃ!」
福助が張り切って鳴いた。
ごおごおと音を立てて、風が巻き上がる。
精霊達の力を借りているせいか、いつもよりさらに激しい。
森を覆っていた霧が、吹き飛ばされていく。
「よつば、『解除』!」
タイミングを合わせて、よつばに指示を出す。
よつばが前足をちょいちょいと動かすと、黒い霧はほとんど消えて、うっすらと残っている程度だった。
そして、虹色に輝く雲が森に雨を降らせた。
雨に当たった霧は、溶けるように消えていった。
空気が爽やかだ。
気分もすっきりしている。
……マイナスイオンみたいな効果もあるのかな。
長の話では、虹雲は徐々に成長し、やがて森全部を覆うくらい大きくなるのだそうだ。
そうなると、《よくないもの》は近付く事すら出来なくなるらしい。
ただ、そこまで大きくなるのには、あと百年近くかかるという事だった。
「そういえば、頼みって?」
みうの言葉に、ここに来た本来の目的を思い出した。
状況を説明し、ラーラ達の行方を探してほしいと頼んだ。
「今、見てみるね」
みうの瞳が金色に光った。
やがて目を閉じ、みうは小さく首を振った。
「ダメ。見つからない」
「……」
「普通なら、残っている気配くらい見えるんだけど……」
せりの「気配察知」でも、みうの「とおみ」でも、気配さえ追えないという事か。
ラーラ達は、どこに消えた?
手がかりは、猫の足跡だけだ。
……猫神様を探すか?
猫がからんでいるなら、それが一番確実だが。
んー?
「つかさ」
長に声をかけられ、我に返った。
「風の精霊達が、福助と共に行きたいと言っている」
…………え?
「気に入ったらしい」
「精霊達は、気に入ったエルフや人間と契約を交わすんだよ」
みうがにこにこして言った。
「え、えーと、契約するとどうなる、のかな……?」
「魔力が増幅され、精霊達が常に力を貸してくれるようになる」
「…………」
いや、いや、いや。
今でさえ、あの威力ですよ!?
これ以上はムリ! だって、福助だし!!
それこそ、うっかり世界を滅ぼす未来しか見えん!
きらきらしたものが福助を包み込み、まばゆい光を放った。
風の精霊達は、勝手に福助と契約を結んでしまったようだ。
人の話を聞かんか、バカ者!
魔王ルートが増えてしまった……。
ラーラ達を探さないといけないのに、何でこうなるんだよ!?




