風魔法と猫。
スキルを確認すると、福助は風魔法が使えるらしい。
「へぇ、風魔法か……」
私には、魔法スキルは一切なかったけどね。
つーか、「猫じゃらしレベルMAX」って何?
この世界で、何か役に立つのか。
「そうか、ふぅん、風魔法か……」
……さては猫達に先にスキルを授けやがったな、アホ女神。
「まぁ、それはいいとして」
うん、いいことにしておこう。
しばらく、猫達の動画は送ってやらないけどね!
「次は、どこに向かえばいいのやら……」
多分、女神様が言っていたのは、福助の事なんだろう。
見つかった以上、ここには用はない。
「……とりあえず、森を抜けようかな」
木ばかり見ているのにも、飽きてきてたところだし。
しばらく歩いて行くと、りゅうたろうが立ち止まった。
耳を伏せて警戒している、いわゆるイカミミだ。
魔物!?
周囲を見回しても、何の姿も見当たらない。
……隠れて様子をうかがってるのか?
いくら大きくなったりゅうたろうが無双状態でも、不意討ちをくらったらマズい。
「福助!」
「?」
私に呼ばれて、福助がキャットハウスから出てきた。
「『風魔法』で、この辺の木をなぎ倒して」
見晴らしさえよければ、こっちのものだ。
りゅうたろうの ぷちっ! をくらうがいい!
「にゃ!」
福助が張り切って、一声鳴いた。
……って、ん!?
福助の起こした風は、あり得ないほどに大きく強かった。
「待て、待て、待て!!」
りゅうたろうにさらに大きくなってもらい、慌ててその下にもぐり込んだ。
そうだった。
福助は常に全力な猫だった。
……つまり、手加減など無理。
さっき突然現れたと思ったら、さては、自分の使った風魔法に巻き込まれたな?
「ちょっと、これ、どうするの!?」
私に抱きかかえられた福助が、無の顔になった。
なるほど、つまり無理だと。
「そうだ!」
「よつば、『風魔法』を『解除』!!」
よつばがキャットハウスから出てきて、ちょいちょいと前足を動かした。
とたんに、ぴたりと風がやんだ。
「助かった……」
りゅうたろうもご苦労様。
通常サイズに戻ったりゅうたろうが、肩に飛び乗った。
うん、頑張ったもんね。……痛いけど。
私達の周りには、森どころか一本の木すら生えていなかった。
あ、海が見える……。




