癒し、求む。
「また調査?」
確かに、私達向きの依頼ではあるが、最近やけに多い。
たまに盗賊に襲われている事もあるが、ほとんどは魔物が近くの街道や森に現れて、村から出られない、という状況だった。
しかも、どこの国や街も同じような感じだ。
もしかして、今の季節は魔物が出やすいとかあるのか……?
「そんな事はないんですけどね……」
受付のお姉さんは、渋い顔をしている。
久しぶりに商業都市ターコイズに戻ってきたのだが、ここでも調査の依頼が入った。
「ターコイズは登録している冒険者も多いですから、大抵は、その前に魔物は駆除されるんです」
なるほど。
「小さな村とはいえ、商売でここに出入りする人も多いですし」
つまり、何らかの予兆があれば、事前に分かるという事だな。
んー?
突如として現れたという事は。
「どこかに強い魔物が現れて、今までいた場所を追われてきたとか?」
噴火騒ぎの時に、地下迷宮から魔物が逃げ出したから、環境の変化の可能性もあるな。
「多分、そんなところでしょうね」
お姉さんは、ため息をついた。
「そちらの情報も集めていますので、何か気づいたらお願いします」
「分かった」
「あと、これは個人的なお願いなのですが……」
「ん?」
「ちょっとだけ、ちょっとだけでいいですから、猫さんを触らせてください!」
いきなり、どうした……?
「ずっと忙しくて、帰っても寝るだけの日が続いていて……!」
癒しが欲しいんですぅ! とお姉さんが叫ぶ。
……だいぶ疲れているな、これは。
見れば、ほかの職員達もうん、うんと力強く頷いている。
あー、うん。
「チャビ、皆さんにモフられてきなさい」
「にゃお!」
ちやほやされる分には全く苦にならないチャビが、ギルドの職員達の間を回って歩く。
「チャビ、『回復』」
チャビがごろごろとのどを鳴らし始めた。
まぁ、サービスって事で。
昨日、一日のんびり過ごしてきた事は言わない方がよさそうだ……。




