急襲。
「りゅうたろう、ドラゴンちゃんと上空で待機」
ドラゴンちゃんの背中に、ひらりとりゅうたろうが飛び乗った。
これで、盗賊の気はそらせるだろう。
「せり、『隠密』」
せりを抱きかかえる。
私の姿も見えなくなったはずだ。
「キング、『空間転移』」
村の中に移動すると、突然現れたドラゴンに大騒ぎになっていた。
「おかしら、どうします!?」
「ド、ドラゴンなんて、どうすりゃ……」
上空ではドラゴンちゃんが旋回している。
下からは、りゅうたろうの姿は見えない。
「騒ぐんじゃねぇ!」
座ったまま怒鳴り付けているあの男が、こいつらのリーダーか。
「村の連中を喰わせりゃいいだろ。腹一杯になりゃ帰るさ」
そう言って、品のない笑い声をあげた。
……クズだな。
「頼む! 村のみんなには、手を出さないでくれ!」
縛られていた男の人達が叫んだ。
顔が腫れ上がり、身体中アザだらけだ。
足が変な方向に曲がっている人もいた。
チャビがちらちらと私の顔を見た。
うん、分かってる。
私はチャビの頭を撫でた。
もう少しだけ、待っていて。
「もちろん、一番最初に喰わせるのはお前らだ」
「……」
「逆らったら、あいつらのいる建物に火をつけるからな」
人質がいるのか。
男の人達は、悔しそうに盗賊どもを睨み付けた。
「なんだ、その目は!」
蹴られた男の人が吹っ飛んだ。
!
いや、まずは人質を解放してからだ。
「よつば、村の中にいるやつらを『魅了』」
村人は閉じ込められているようだから、今いるのは全て盗賊の一味だろう。
よつばは、もふもふのしっぽをぴんと立てて歩きだした。
「あん、なんだ、ありゃ?」
「猫じゃねぇか、ほっとけ」
こういう時、猫はいいな。
怪しまれずにすむ。
しばらくして、よつばが戻ってきた。
「にあん!」
よし、終わったか。
「行くよ!」
突如、姿を現した私達に盗賊どもはぎょっとした様子だった。
「な、なんだ!?」
「てめえ、どっから来やがった!?」
答える義理はないな。
「チャビ、『雷魔法』!」
「にゃお!」
轟音と共に、雷が落ちた。
「おこん、行け!」
おこんが、盗賊どもを引っ掻いて回る。
チャビの「雷魔法」とおこんの「引っ掻き」を組み合わせると、麻痺の確率がほぼ百パーセントになるのだ。
「こいつ、《猫を連れた冒険者》か!」
「逃げろ!!」
おこんが引っ掻きそこねた連中が、慌てて逃げ出した。
橋もないのに、どこに逃げる気だ。
まぁ、逃がす気もないけどな。
「キング、『影魔法』で拘束!」
「にゃう!」
盗賊どもの影が、地面に張り付いたように動かなくなった。
それと同時に、本体も一歩もそこから動けなくなった。
あとは。
「くぅ、やっておしまい」
「あぉぉぉ!」
「あ、あれは、まさか、《黒の魔王》!?」
「ひぃぃ!」
盗賊どもに、容赦なく火をまとった岩が降り注ぐ。
「ぎゃあああ!」
「助けてくれー!!」
ふむ、駆除完了だな。




