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食べ物ではありません!
「福助、おいで」
落ち着いて呼ぶと、福助はとてとて戻ってきた。
顔がいいのと、性格が素直なのが取り柄なのだ。
……ほかの事は、まぁ、あれだ、うん。
「良かった、無事だったんだね」
差し出した手を、福助がぎりぎりと噛んだ。
「痛い!」
子猫の頃、しばらく自力で食べられない状態だった福助に、私は手でご飯をあげていた。
大人になった今でも、福助は私の手に執着している。
「痛い、離して!」
しぶしぶ福助は噛むのをやめた。
これは、相当お腹を空かせていたようだ。
無理もない。
よつばではあるまいし、ましてや福助だ。
いくら森の中とはいえ、自力で食糧を調達など出来なかったのだろう。
「……あれ?」
りゅうたろうに寄りかかって休む前に確認したはずなのだが、猫の気配は近くになかったはずだ。
「福助、あんた、どこから来たの?」
「?」
福助はきょとんとした顔で私を見上げている。
まぁ、いいか。
「ご飯にしようか、福助」
福助は嬉しそうに、私の手を噛んだ。
たから、私を食べようとするんじゃない!!
 




