再び。
「帰る前に、わらわの加護を授けよう」
「……え?」
いや、待って!
すでに「精霊の加護」持ちのくぅに、火の神様の加護までついたらエラい事になる!
世界が燃えつきる!!
「心配せずともよい。お主や猫達に、魔法が効きにくくなるだけじゃ」
つまり、魔法耐性がつくという事か。
それなら、ありがたく受け取ろう。
くぅ以外、魔法耐性はなかったし。
「それと、これを持っていくがよい」
そう言って、火の神様が取り出したのは赤く光る結晶だった。
「炎水晶ですか?」
「魔炎石じゃ」
初めて聞いたな。
「それ一つで、国が買えるぞ?」
受け取った私に、火の神様は悪戯っぽく笑ってみせた。
「……は?」
「まぁ、あれじゃ。サナとナルシを救ってくれた礼じゃ」
そう言った火の神様が、本当に優しそうに笑ったので、断りきれなかった。
少し面倒くさいけど、火の神様はサナ達が大事でたまらないのだろう。
「ありがとうございます」
「ナロクの所に行って、武器と合成してもらうがよい」
並みの鍛冶師では、扱いが難しいらしい。
……でも、私の武器ってナイフと草刈り鎌くらいなんだけど。
んー?
草刈り鎌に火属性をつけたら、根が焼ききれるから意外といいかも?
いや、でも、それってもはや武器じゃないような……。
まぁ、いいか。
「ありがとうございました」
「うむ。また来るがよい」
ものすごくヒマな時に、またお邪魔しますね?
ナロクの所に向かう前に、スキルを確認する。
「火の神の加護」 魔法耐性。
うん、私にも猫達にもついているな。
元々、魔法耐性を持っていたくぅは「魔法無効」になっていた。
ますます魔王に近づいているな……。
その内、最終形態とかありそうだ。
……くぅだと、冗談で終わらなさそうなところが怖い。
カンカンと金属を叩く音が聞こえてきた。
ここが、ナロクの工房か。
「こんにちは」
中に入ると、むわっとするような暑さだ。
「おぅ、お前さんはサナ達の友達の……」
チャビの暴走で若返ったナロクには、ここ百年ほどの記憶がない。
どういうわけか、サナ達の事だけは覚えていたが、私に二人の捜索を依頼した記憶はなかった。
「《猫の冒険者》じゃな!」
うん、微妙に違う。
相変わらずだ。
「魔炎石との合成をお願いしたいんですが」
「ほぅ、魔炎石か」
珍しいものを持ってきたな、とナロクは目を輝かせた。
「よし、引き受けた」
ところで、とナロクは私の顔を見た。
「サナ達には、最近会ったか? 怪我なんぞ、しとらんかったか?」
「……」
「冒険者として売れてきたせいか、あまり帰って来んのじゃよ。まぁ、サナ達なら大丈夫じゃとは思っているんじゃが」
……ここにもいたか。
「よつば、『魅了』!」




