至極当然。
「それで、サナが泣き出してしもうての」
「アー、ソウデスカ」
「ナルシが一人で行くと言ってきかんのだ」
「アー、ソウデスカ」
……いつまで続くんだ、これ。
やっと、サナ達がナロクに引き取られるところまでいったけど。
もしかして、火の神様は暇をもて余しているのか?
「それが、また可愛くての」
いや、ただの親バカか。
まぁ、猫達の事を思えば私も気持ちは分かるが。
とにかく、話が長い!
そういや、伝承では千二百年くらい前に火の神様と人間の男が恋に落ちたとかいう話だったな。
火の神様、まさか、千年以上さかのぼって話す気じゃないだろうな……?
ぐーっ、と私のお腹が鳴った。
そういや、ご飯まだだった。
「おお、すまぬ。長々と話してしもうたようじゃな」
お、これは、やっと終わるか?
「何か、食べる物を持ってこさせよう」
「……」
まだ話す気だ、この人! じゃなくて、神様!!
「よければ、泊まっていくがよい」
「…………」
やっぱり、千二百年分話す気だ!!
うーむ、どうにかして逃げ出さないと。
キャットハウスから、よつばが出てきた。
「にあん!」
あー、怒っているな、これは。
いつものご飯の時間は、とっくに過ぎている。
「よつば、戻っていなさい」
「ほう、これがよつばか。ナルシがもふもふだと珍しくたくさん話してくれての」
にこにこしながら、火の神様が言った。
よつばはしばらくの間、火の神様の顔をじぃっと見ていたが、くりんと首を傾げてみせた。
「にぁぁぁん?」
ん? 何だ、今の妙に甘ったれた声は?
火の神様は、よつばを見つめたまま蕩けたような表情を浮かべている。
「そうだの。そろそろ帰らねばならぬな……」
話し方も、どこか夢見心地というか、ぼんやりしているようだった。
「……」
これは、多分アレだな、うん。
こっそりと、よつばのスキルを確認する。
よつば 「魅了」 相手を魅了して操る。
ですよねー、としか言いようがない。
しかし、神様まで魅了するとは、さすがはよつばだ。
いや、でも、元々持っていたようなものだしな。




