猫です。ぱーとふぉー。
「魔物の買い取りをお願いしたいんですけど」
火の神様に会うため、火山都市ガーネットにやって来たのだが、その前にギルドに立ち寄った。
「はい、どうぞ」
若いドワーフがにこにこしながら、カウンターの上の物を脇に寄せた。
「……あー、多分、乗らないと思うんですけど」
「あ、そうですか、すみません。じゃあ、床でも大丈夫ですよ?」
うーん。これは、はっきり言った方がいいか……。
「ドラゴンなんですけど」
「……え?」
一瞬ぽかんとしたあと、若いドワーフは、ああ、と頷いた。
「鱗とか牙ですか? いや、翼とかしっぽだと大きいですね」
「本体です」
「…………え?」
片方の翼はりゅうたろうが噛みちぎったのでぼろぼろだが、全体としては状態がいいはずだ。
「あの、お一人で、ドラゴンを……?」
「いえ、猫です」
「……………………え?」
「うちの猫が、狩りました」
「ね、こ……?」
ああ、これは完全に理解の範疇を越えたな。
仕方ない。
「ギルドマスターに、《猫を連れた冒険者》が来たと伝えて下さい」
「は、はい……」
ごめんな、若いドワーフくん。
新人さんっぽいのに、変なのが来て。
「おう、お前さんか」
以前、サナ達の捜索依頼を受けた時に、二人の養い親であるナロクと口論していたドワーフのギルドマスターが奥から顔を出した。
「お久しぶりです」
「そういや、お前さんのおかげで噴火を防げたんだって?」
ありがとうな、とギルドマスターは笑った。
「いや、うーん、あれも猫が……」
「で、魔物の買い取りだって?」
マイペースだな、おい。
まぁ、いいけど。
「ドラゴンなんですけど、どこに出したらいいですか?」
「ドラゴン? まるごとか?」
「はい」
そりゃすげぇな、と言ってギルドマスターはあごを撫でた。
「ギルドの中じゃ無理だしなぁ」
「ですよね」
よし、とギルドマスターは膝を打った。
「広場でやるか」
「ええ? 大丈夫なんですか?」
「ドラゴンなら素材として欲しがるやつも多いから、皆の前でやった方がいいだろ」
「ああ、なるほど」
ここガーネットは、鍛冶師や細工師が多い。
ドラゴンはめったに獲れないので、欲しがる人はいるだろう。
あまり目立ちたくはないが。
まぁ、今さらか。
この先もドラゴンを獲ってくる事は増えるだろうから、今のうちに慣れておこう。
りゅうたろう達に先を越されたくぅが、やる気満々なんだよな……。




