新スキル。
うん、農耕神様は悪くない。
多分。
猫か? 猫が神様を狂わせるのか?
私は、何もない草原でたそがれながら、大きなため息をついた。
ドラゴンちゃんのお散歩のために、誰も通りかからないような草原のど真ん中で休憩中なのだ。
「……盗賊でも、連れて来ないかな」
ドラゴンちゃんはどういうわけか、盗まれたお宝を横取りするのが好きらしい。
持って来るのが好きなだけで、そのあとは私にお土産としてくれるので、お宝に執着はしていない。
お宝はギルドに渡してしまえばいいだけなので、別に持って帰ってくる分にはかまわない。
けれど、たまにお宝を取り返そうとしているのか、それとも、ドラゴンを捕まえたいのか、盗賊が追いかけてくる事がある。
普段なら、面倒なだけだが。
とりあえず、八つ当たりする相手がほしい……。
今回は猫にまかせず、私も水風船をぶつけまくりたい。
あれ、意外とすっきりするんだよな。
せりが、イカミミの警戒状態になった。
「気配察知」だ。
よし、来たか!
「ピギィィィ!!」
ん?
今のは、ドラゴンちゃんの悲鳴?
必死に逃げてくるドラゴンちゃんの背後から、さらに大きなドラゴンが追いかけてきている。
あのバカ、ほかのドラゴンの縄張りに入ったな!
せりが歯をむき出し、毛を逆立て、最大限の警戒をしている。
「!」
あれは、人を襲うドラゴンか!!
「くぅ! チャビ!」
くぅとチャビが、戦闘体制に入る。
ドラゴンちゃんが、私の後ろに降りてきた。
だから、それ、隠れてないからな!?
りゅうたろうが、私の肩からひらりと飛び降りた。
「りゅうたろう、戻って!」
空を飛べる相手では、りゅうたろうは戦えない。
虎ほどの大きさになったりゅうたろうが、私の方を振り返って口を開いた。
「……!」
サイレントニャー?
こんな時にどうした?
ばっさばっさと羽音がして、風が起きた。
ドラゴンちゃんが宙に舞い上がり、りゅうたろうがその背中にひらりと飛び乗った。
「……は?」
え、何だ、これ?
りゅうたろうを背に乗せて、ドラゴンちゃんが大型のドラゴンへと立ち向かう。
……何が起きている?




