魔王姉弟。
「なんぞ、礼をせんとな」
「いいえ、大丈夫です」
よつばの件を、怒らないでいてくれるだけでありがたい。
「お主は冒険者だから、畑は持っておらんしのぅ」
困ったように、農耕神様は頭をかいた。
「でも、将来的には小さい畑とかやってみたいです」
冒険者を引退したら、のんびり自給自足とかもいいかもしれない。
「なら、儂の加護を授けよう」
いつでも豊作じゃよ? と、農耕神様は悪戯っぽく笑ってみせた。
きちんと作物の世話をするのが条件だが、まぁ、当然だろう。
「それと、お前さんにも礼をせんとな」
膝に乗せたままのチャビの頭を撫でながら、農耕神様が言った。
…………。
いや、待って、農耕神様!
嫌な予感しかしないんですけど!?
「精霊魔法と相性が良さそうじゃし、雷魔法とかどうかの?」
そりゃ、くぅの姉弟だし、精霊魔法と相性がいいのは確かだろうけど。
チャビは魔力が高い方だし、エルフの友だから「精霊の加護」もつく。
しかも、チャビもくぅとは違う方向で暴走する。
そこに、農耕神様からもらった雷魔法!?
「えーと、何で、雷魔法を……?」
違う! そうじゃないだろう、私!!
断れ!
「農耕と雷は、関係があるんじゃよ」
雨乞いも出来るしな、と農耕神様は笑った。
雨乞い……。
ダメだ、天変地異が起きる……。
「……儂の心も、『回復』してくれたしの」
ちょっとした気休めくらいにしか、ならなかっただろう。
それでも。
神様という存在は、頼られたり、守護したりするもので、誰かに慰めてもらえたりはしないのだろう。
それに、国の民ではない、ただの猫の慰めだったから、農耕神様も素直に受け入れられたのかもしれない。
ああ、これは断りにくい。
だけど、このままだと……。
私がうだうだとしている間に、農耕神様はチャビに「雷魔法」を授けてしまった。
うちの、うちの唯一の癒し系が……!!
もうダメだ。
チャビとくぅの姉弟猫だけで、世界が滅びる……。




