惨状。
「儂も、この国も、荒事は苦手での」
確かに、オパール王国はほかの国と比べると平和な国だ。
ギルドへの依頼も、ほとんどがお使いや採取系だ。
魔物退治などは、めったにない。
「以前に魔物の大発生も防いでもらったし、フラーも退治してもらった」
農耕神様は、私を見てにっこりと笑った。
「本当に、感謝している」
「あ、いいえ」
魔物の大発生を防いだのは、副産物的なものだったし、フラーはうちの猫達の狩りだったしな……。
ふう、と農耕神様が疲れたようなため息をついた。
「?」
「……少し前にも、フラーの群れに襲われた事があっての」
……ギルドマスターのおばあさんが言っていたやつかな?
神様だと、少し前くらいの感覚になるのか。
「猫神に来てもらって、一緒に駆け付けたんじゃが……」
農耕神様は苦しそうな顔をした。
悲惨だったのだろう。
自分が守護している国と民の惨状を見て、神様はどんな気持ちになるのだろうか……。
「食い荒らされた死体の中で、血塗れになった若い冒険者の夫婦が戦ってくれていたんじゃが……」
農耕神様が、言葉に詰まる。
「儂らの顔を見た時の、あの子達の目が忘れられんのだ」
助かった? 何で? もっと早く?
その場にいなかった私には分からない。
仕方なかったと言える立場でもない。
するりと、キャットハウスからチャビが出てきた。
そのまま、農耕神様の膝に飛び乗った。
「こら、チャビ!」
チャビは、農耕神様の顔を見ながらごろごろとのどを鳴らし始めた。
チャビ、もしかして。
「慰めてくれとるのか……?」
農耕神様は、泣きそうな顔になった。
「優しい子じゃ」
そう呟きながら、農耕神様はチャビの頭を撫でた。
……まぁ、うちの癒し系なんで。
いかん。私が泣きそうだ。
「心持ち、身体が軽くなったような気もするのぅ」
あ、それは気のせいではないです、多分。
「チャビのスキルは『回復』なので」
しかし、神様にも「回復」の効果ってあるんだな……。




