農耕神。
海賊どもの後始末は町の人達に任せて、私達はオパール王国へやってきた。
べ、別に面倒だから逃げたわけでは……。
宿の代金だって、前払いしてあったし。
…………。
そんな事より、今は農耕神様だ。
「よし!」
気合いを入れて、私は農耕神様の神殿へと向かった。
とりあえず、よつばの事はきちんと謝ろう。
あの時は、女神様に任せてしまったからな……。
まぁ、当時は女神様以外の神様に会う事になるとは思っていなかったし。
……あとは、よつばのあざとさが通用する事を祈るしかない。
いや、神様相手にするのに、何に祈ろうとしているんだよ、自分!
無理だろ!
うん、やっぱり素直に謝るしかないか……。
農耕神様の神殿は、木造の古い造りのものだった。
豪奢ではないけれど、柱も床も丁寧に磨かれ、農耕神様が信仰を集めている事が分かった。
神殿の中央に木彫りの像が置かれていた。
私は、像に向かってぺこりと頭を下げた。
「相田つかさです。幸運の女神様に言われて来ました」
するりと、像から農耕神様が抜け出してきた。
「わざわざ来てもらって、すまんかったの」
農耕神様は、人のいいおじいちゃん、といった感じだった。
「いいえ」
私は、キャットハウスからよつばを出した。
「先日は、うちのよつばがご迷惑をおかけしまして……」
「にあん……?」
不安そうな表情を浮かべて、よつばは首を傾げてみせた。
「かまわん、かまわん」
農耕神様は、にこにこしながらよつばの頭を撫でた。
「農耕をする者にとって、猫は相棒みたいなもんだからの」
「にあん!」
こら、よつば! 調子に乗らないの!
「ちょいと、座って話そうかね」
農耕神様が手を振ると、ふわりと音もなくテーブルとイスが現れた。
「よっこらしょ」
農耕神様が、私にも座るようにと手で促した。
「失礼します」
「堅苦しいの。近所のおじいちゃん、くらいの感じでかまわんよ?」
うちの信者はみんなそうだと言って、農耕神様は声を出して笑った。
「ルッコの実のジュースでも飲むかね?」
「はい、ありがとうございます」
私がジュースを飲むのを、農耕神様は嬉しそうに見ていた。
「美味いかの?」
「はい」
うんうんと、農耕神様は頷いている。
「ここはいい国じゃよ。気候も温暖で、作物の種類も豊富での」
すっと、農耕神様は姿勢を正した。
「わざわざ幸運の女神に頼んで、お主に来てもらったのは、礼を言いたかったからじゃ」
……お礼?
フラーの件かな?




