召喚魔法。
クラーケンは、トルマリンを襲うように操られていたという事か?
誰が、何のために?
ドラゴンちゃんの時に感じた疑問が、再び頭の中によぎった。
「杭が小さすぎて、自分では抜けなかったらしい」
確かに、クラーケンに対して杭は小さすぎた。
人間なら、小さな棘が刺さったようなものだろう。
「お前のところの猫が『回復』してくれたおかげで、傷が塞がって杭が抜けたらしいんだ」
なるほど。
それで、クラーケンは正気に戻ったという事か。
女神様が結界を張った時には、クラーケンは眠っていたからなぁ。
気付いた時には、海の底だったと……。
「ただでとは、言わない」
迷惑をかけたのは事実だしな、と海神様は頭をかいた。
「俺から『加護』も授けるし」
……加護?
いりません!
これ以上、ややこしい事になるのはお断りします!
「海に出た時は、絶対に海が荒れないっていう加護はどうだ?」
「……」
今のところ、海に出る予定はないが。
その加護なら、もらっても問題はないか。
「それと、クラーケンにも働かせる」
「……どうやって?」
「召喚魔法で呼び出せるようにすれば、いいだろ?」
うーん、召喚魔法かぁ……。
それなら、こっちでコントロール出来るしな。
海だとりゅうたろうは戦えないし、物理攻撃が出来るのはいいかも……。
「分かりました」
「本当か!?」
「ただし、トルマリンの人達の許可を取ってからにして下さい」
一番、迷惑を被ったのは、町の人達だ。
「それなら、もう話はついている」
実害が少なかった事もあり、今後三年、豊漁を確約する事でクラーケンを許してもらったらしい。
手回しがいいな……。
「じゃあ、そういう事でいいか?」
「はい」
じゃあ早速、と海神様は女神様と話をすると言って海に帰って行った。
もちろん、帰る前には加護を与えてくれた。
ふむ。召喚魔法か。
あれ? スキルが増えてない。
海神様、忘れていったのか?
いや、「海神の加護」はついている。
「……」
これは、もしかして……。
確認すると、せりのスキルが増えていた。
「召喚魔法」 召喚可能 クラーケン。
「…………」
海神様、あんたもか!!




