加護。
あー、充実してるなぁ……。
不意に、せりがイカミミ状態になり、毛を逆立てた。
「気配察知」か!
……やっぱりか。
やっぱり、何か起きるのか!
私はスローライフがいいんだってば!
「きゃあぁぁぁ!」
悲鳴が聞こえた。
「せり、どこ!?」
せりが走り出す。
ルッコの入ったカゴを置き、私もせりのあとを追った。
小さい子が、果樹園の端で座り込んでいた。
視線の先にいたのは、モルアという熊と猿が合わさったような大型の魔物だ。
知能も高いが、凶暴で人を襲う事もある。
子供が一人になるのを待っていたのか?
猫達は、ばらばらになって遊んでいる。
一番、近くにいるのは。
「福助、『風魔法』!」
「にゃ!」
福助が、張り切った様子で鳴いた。
地下迷宮で出番がなかったから、うずうずしていたようだ。
いや、だって、地下で福助が風魔法を使ったら大惨事確定だし……。
ごおごおと音をたて、風が激しく渦を巻いている。
ん?
「にゃー!」
竜巻に巻き上げられ、モルアが宙に浮いた。
ぐるぐるとモルアの体が回り、空高く舞い上がったかと思うと、あっという間に見えなくなった。
いや、いや。
福助や、いくら鬱憤が溜まっていたからって、やり過ぎだろ……。
んん?
福助、スキルが増えてないか……?
「精霊の加護」って、何だ?
そんなスキル、いつ……。
「……」
アレか?
もしかして、アレか?
エルフの誓い!
エルフ達は、神ではなく精霊を信仰している。
そして、精霊から加護を与えられている。
虹雲の卵を黒のキャラバンから取り返したあと、みうの父親であるエルフの長から誓いを受けた。
私と猫達はエルフの友である、と。
あれのおかげで、福助に「精霊の加護」がついたのか?
「!」
まさか。
慌ててくぅのスキルを確認すると、やはり「精霊の加護」を持っていた。
うん、土に水に火だからな。
キレてさえいなければ、くぅは魔力をコントロール出来るから地下迷宮では気付かなかったのだろう。
「……」
よりによって……。
魔力は高いが常に全力な福助と、魔王モードになるくぅに、「精霊の加護」がつくなんて……。
気持ちは嬉しいが。
私は地面にへたり込んだ。
「勘弁してよ……」
うっかり世界を滅ぼしたら、どうするんだよ!
私のスローライフを返せ!




