忘れ物。
「て、てめえ、よくも……、ひぐっ、ひぐっ」
「なんか揺れるし、もうダメかと……、ううっ」
むさ苦しいのが、集団で泣くなよ。
うっとうしいな。
「ちょっと、忘れてただけでしょうが」
「ちょっと!?」
「ていうか、本当に忘れてやがったのか!?」
はぁ、と私はため息をついた。
「ちゃんと回収に来たんだから、もういいでしょ」
噴火の事ですっかり忘れていた盗賊どもを回収に来たのだが、私を見た瞬間、全員泣き出してしまったのだ。
「聞きたい事があるんだけど」
「な、何だよ! 忘れてたくせに!」
「……置いていくぞ」
「何でも聞いて下さい!」
魔方陣の事を知っていたかと聞くと、盗賊どもはきょとんとした。
「炎の竜の寝床までしか、行ったことねぇな」
んー?
だとしたら、魔方陣を損傷させたのは誰だ?
「そういや、新入りはどこ行った?」
「新入りって?」
「えーと、あれ……?」
「だから、新入り……?」
んん?
どうやら、新入りがいた事は覚えているようだが、それがどんな人物だったかは記憶に残っていないようだ。
まぁ、そいつが今回の件の関係者だろうな。
古代神語を理解し、盗賊どもの記憶を操作している。
しかも、噴火させるという、自分の手を汚さない手段を使っている。
……タチが悪いな。
私の顔を見た盗賊どもが、ペットゲージの中で後ずさった。
そんなに凶悪な表情していたか?
とりあえず、こいつらをギルドにつき出してからだな。
「は、早く連れて行ってくれよぉ……」
捕まりたがる盗賊っていうのも、どうなんだろう……。




