約定。
……で、これはどうした?
「ヨッホゥ! 身体が軽いわい!」
ナロクがはしゃいで、ひたすら暴れている。
おお、宙返りまで。
「つかさ! 大丈夫だったかい?」
サナ達が駆け寄ってきた。
「うん、魔方陣も復元出来たよ」
「なら、噴火はしないんだな」
ナルシが、ほっと息を吐いた。
「ところで、ナロクさんはどうしたの?」
私の言葉を聞き、サナとナルシは顔を見合わせた。
「それが……」
チャビの暴走から逃げる時に、ナロクだけ遅れてしまったらしい。
「回復したんだとは、思うんだが……」
それにしては大袈裟だと、ナルシが首を傾げている。
あー、多分、若返ったんだろうな。
サナ達は、チャビの暴走に巻き込まれると子供に戻ってしまうという事は知らない。
でも、ナロクは若返っただけだ。
「もしかして、ドワーフって人間より寿命が長いの?」
「うん、そうだよ。親父は確か、六百才くらいだって言ってたかな」
なるほど。
どれくらい若返ったのかは分からないが、身体が軽く感じるくらいには戻ったようだ。
まぁ、いいか。特にデメリットもなさそうだし。
「あと、何でナルシは古代神語が読めるの?」
「……」
ナルシが視線を伏せた。
「あ、いや。言いたくないなら、別に……」
「あたし達の父親が、魔導の塔の出身だからさ」
「サナ!」
大きな声を出したナルシを、サナが拳でどついた。
「つかさは、大事な友達だろ。あたしは隠さないよ」
サナは、私の顔を見てにっと笑った。
「あたし達の父親は、魔導の塔から逃げた魔導師なのさ」
「逃げた?」
「……捕まっていた、俺達の母親と一緒に逃げたんだ」
それは、アレか。
恋に落ちたとか、そういうアレか。
ほほぅ。
いかん、年寄りくさくなってしまった。
「で、兄貴は古代神語を習ったんだけど、あたしはまだ小さかったからね」
だから、教えてもらってないと言うサナに、ナルシがため息をついた。
「泣いて暴れて嫌がったのは、誰だ」
……なんか、状況が浮かんでくるな。
しかし、魔導の塔に捕まっていたという事は、サナ達の母親はみうのような能力の持ち主だった可能性が高い。
……まさかな。
「火の神の娘……」
「!」
「何で、知ってるんだい?」
マジか。
いや、待て。
確か、魔方陣には《火の神の娘の血が絶えた時》と書かれていた。
という事は、魔方陣がどうなろうと、私がサナ達を助けるのが間に合わなかったら噴火は止められなかった……?
「……」
何だろう、この気持ち悪さは。
そうだ、あの夢には、ミーコさんのほかにも誰かいた。
あれは、誰だ……?
「一度、ガーネットまで戻ろう」
ナルシの言葉に、我に返った。
「もう大丈夫だって、皆に教えないとさ」
「うん、そうだね」
……?
はて、何か忘れているような……?




