猛勉強。
念のため、サナはガーネットに帰ってもらう事にした。
噴火した場合に備えて、ドワーフ達に警告するためだ。
「キング、ガーネットに『空間転移』!」
キングがぱちりと目を閉じ、サナと一緒に姿を消した。
「つかさ、次」
「はい!」
ナルシは、意外とスパルタ教師だった……。
せりは落ち着かない様子で、ずっとしっぽを振っている。
大丈夫、まだ大丈夫……。
だけど、間に合わなかったら……?
ぎりっと、私は唇を噛んだ。
「……落ち着け」
ナルシの言葉に、我に返った。
「まだ、時間はある」
「うん……」
……そうか、お兄ちゃんって、こういう感じなんだ。
ずっと一人だったから、変な感じだけど。
通常サイズになったりゅうたろうが、私の足に頭を擦り付けた。
いや、一人じゃなかったな。
私は、ずっと猫と一緒だった。
猫達は、私とこっちの世界に来る事を選んでくれた。
今、私は《猫を連れた冒険者》と呼ばれている。
……このまま、ずっと。
猫達と、この世界を冒険するために。
「よし! やるぞ!」
気合いを入れた私を見て、ナルシは一瞬目を見開き、それから笑った。
「……次、ここ」
スパルタなのは、変わらないけどな!
パンやチーズをかじりながら、古代神語の一夜漬けを続ける。
集中力が途切れかけたところで、少しだけ仮眠を取った。
サナがナロクと一緒に戻ってきた。
「つかさ、ずいぶんやつれちまったね……」
そう、ですか……?
ギルドから声をかけてもらって、街の人達は避難の準備を始めたらしい。
「ナロクさんは、どうして……?」
街の人達と一緒に避難しなかったのか?
「自分の子供が命をかけとるのに、ワシだけ逃げるわけにはいかんわい!」
そう言って、ナロクはどっかりと座り込んだ。
私はナルシに古代神語を教わり続けた。
サナやりゅうたろう達も、黙ってずっと近くにいてくれた。
……。
…………。
……………………。
「●○□▼◇!」
「つ、つかさ……?」
突然意味不明な言葉を叫んだ私に、サナが顔をこわばらせた。
あー、うん、大丈夫。
ちょっと、言ってはいけない言葉を発しそうになっただけだから……。
だけど、とうとうやったぞ。
古代神語スキル、レベル2だ!
ぐらりと地面が揺れた。
ぱらぱらと土埃が落ちてくる。
噴火が近い!
「チャビ、おいで」
もう時間がない。
「チャビ、『回復』」
ごろごろとチャビがのどを鳴らし始めた。
同時に、魔方陣が淡く光り始めた。




