炎の竜。
「やれやれ、なんだっていうんだろうね」
サナがため息をつく。
……。
そうだ、思い出した。
ミーコさんの夢だ。
空が、何かに覆い尽くされている。
太陽が隠れて、地上は真っ暗だ。
水は干上がり、草は枯れ、大地はひび割れている。
あれは、フラーの事じゃなかった……?
「せり!」
私はせりを抱き上げ、魔方陣の中心に向かって走り出した。
「つかさ!?」
サナやりゅうたろうが慌てて追いかけてきた。
ずいぶん走って、ようやく魔方陣の中心にまで来る事が出来た。
むわっとするような暑さだ。
せりが、魔方陣に向かって砂をかけるような仕草をした。
触ろうとしたが、熱すぎて無理だった。
やはり、そうか。
「つかさ? どうしたんだい?」
サナ達を振り返った私は、おそらく青ざめていた。
「火山が、噴火する……」
「!」
火の竜とは、火山の事だ。
ここの魔方陣は、火山の噴火を抑えるために描かれたものだ。
それが、何者かによって破損した。
魔物がいなかったのは、火山が噴火する予兆に気付いて逃げ出したからだ。
あの規模の火山が噴火したら、数年は火山灰が降り注ぐ。
空が火山灰に覆われ、太陽の光が届かない。
あとは、夢の通りになるはずだ……。
「噴火って、どうすりゃいいんだい!?」
魔方陣を修復出来れば……。
いや、ダメだ。
私達には、古代神語は分からない。
よつばが『解除』出来ないのだから、チャビにも『回復』は出来ない。
「急いで、皆に知らせて……」
最悪の状況を避けるために、避難を優先するべきだ。
「……古代神語が分かればいいのか?」
ナルシが、ぼそりと言った。
そうか、ナルシなら読める!
問題は、どうやって私達がそれを理解するかだ。
……。
これは、アレだな、うん。
懐かしき一夜漬けしかあるまい!
「はぁ!?」
私の話を聞き、サナは呆れたような声を出した。
「そんな無茶な話があるかい」
ほかに思い付かないんだから、仕方ないでしょうが!
私はナルシを振り返った。
「この感じだと、今すぐ噴火するってわけじゃなさそうだし、なんとか間に合わせるしかないよ!」
「……そうだな」
頷くと、ナルシは魔方陣の上にしゃがみ込んだ。
「《火の竜の息吹きに……》」
「ま、待って!」
無限収納の中から、ノートと鉛筆を取り出した。
「えーと、▼◇★○が……」
一夜漬けなんてしたの、ずいぶん前だけどちゃんと出来るかな……。




