魔導人形。
何だ、これ。
地面に、巨大な魔方陣が描かれている。
中心は、ずいぶん遠い。
せりが振り返った。牙をむき出している。
「気配察知」? 今度は何だ?
「サナ! つかさ! 来るぞ、ゴーレムだ!」
ナルシが叫ぶのと同時に、岩で出来たロボットのようなものが壁から現れた。
「りゅうたろう!」
りゅうたろうが、せりを守るようにゴーレムの前に立ちふさがった。
「くぅ! 『水魔法』!」
くぅの周りに、水が渦を作った。同時に、数百の剣が空中に現れた。
水と共に勢いよく繰り出された剣が、ゴーレムの体を貫く。
りゅうたろうが飛びかかり、ゴーレムの体にのしかかって砕いた。
サナとナルシも、それぞれ武器をふるってゴーレムを倒している。
「逃げるぞ!」
「え?」
りゅうたろう達が倒したはずのゴーレムの体が再生されていく!
マズい、このままではキリがない!
……いや、待て。魔導人形、だよな?
なら。
「よつば、ゴーレムを『解除』!」
よつばが前足をちょいちょいと動かすと、ゴーレムががらがらと音を立てて崩れていった。
「つかさ達と一緒で助かったよ」
ふぅ、とサナがため息をついた。
あれ、なんだ……?
今、何か……?
「ゴーレムは、この魔方陣を守っていた……?」
せりが、魔方陣を前足でぱすぱすと叩いた。
「これは……」
魔方陣の一部が消えている。
「これ、変じゃないかい?」
サナが眉をひそめた。
消えかたが不自然だ。
まるで、削り取ったかのようだ。
残っている部分を見てみると、▼■□●と書かれてあって読めない。
これ、確か魔導の塔の時……。
「古代神語だね」
「え? サナ、読めるの?」
「いや。でも、兄貴は読めるよ」
ナルシがしゃがんで、文字をのぞき込んだ。
「火の竜とのけん、いや、契約……。あとは、削られていて読めない」
火の竜との契約?
実際には、炎の竜は存在しないはずじゃなかったのか?
せりが移動し、またぱすぱすと地面を叩いた。
見てみると、そこも不自然に魔方陣が消えていた。
サナ達と確認してみると、消えていたのはその二ヶ所だけだった。
「だけど、これ、誰かが意図的に消しているよね?」
「俺も全部は読めないが、おそらく大事な所だけ消してあるようだ」
……誰が、何のために?




