猫の目。
「少しでいいんでぇ、水と食べ物を分けてほしいんですけどぉ」
……根こそぎ奪うつもりでいるくせに。
テントの入り口を開けると、おこんが飛び出して行った。
「うわっ! なんだ!?」
「おこん! やってしまえ!」
盗賊の顔に飛びつき、おこんがめちゃくちゃに引っ掻いた。
「ぎゃあああ!」
盗賊が悲鳴を上げて、顔を押さえる。
おこんは素早く飛び降り、明かりの届かない暗闇に身を潜めた。
こっちの世界に来てから、猫達はすっかり狩りの達人になってしまった。
「気をつけろ! 何かいるぞ!」
「てめえ!」
ふん、出てきたか。
「りゅうたろう!」
虎ほどの大きさになったりゅうたろうが、盗賊どもに飛びかかる。
「うわあああ!」
「なんだ、こいつ!?」
身を潜めるために、明かりを用意しなかったのが仇になったな。
猫達には、テントから漏れる明かりで十分だ。
暗闇で、人間が猫に勝てると思うなよ!
おこんは盗賊どもの顔を引っ掻き、また素早く暗闇に身を隠す。
りゅうたろうは、大きさをいかして前足で叩きのめす。
「ぎゃあああ!」
「この野郎! どっから来やがってんだ!」
やつらにしてみれば、暗闇から正体の分からないものに襲われている状態だ。
さて、どうするか。
捕まえると、一度戻らなくてはいけなくなるから面倒だ。
かと言って、見逃すのもなぁ……。
んー?
また、アレでいいか。
「りゅうたろう、壁の方に追い込んで!」
りゅうたろうが、盗賊どもを殴り飛ばして壁際に追い詰めた。
「おこん、『創成魔法』! でっかいペットゲージ!」
がしゃんっ、と音を立ててペットゲージの中に盗賊どもを閉じ込めた。
「なんだ!?」
「出しやがれ!」
出すわけないだろう。
あ、そうだ。
「大剣使いの男の人と、槍使いの女の人の二人組を見かけなかった?」
「ああ?」
「見かけても言わねぇよ、ばぁか」
……まだ立場というものを分かっとらんようだな。
「あー、私、忘れっぽいからなー」
「あ?」
「このまま、捕まえた事とか忘れそうだなー」
「な!?」
私の言葉に、盗賊どもはぎょっとしたようだった。
「てめえ、まさか、俺達を置き去りにする気か!?」
「誰か来るといいねー」
「ま、待て! 二人組だろ!?」
「炎水晶の所で見たぞ!」
盗賊どもが、慌てて騒ぎ出す。
「炎水晶の所って?」
「この奥だ!」
「いつ頃?」
「確か、十日前くらいだ」
……少なくとも、十日前までは順調だったようだ。
「腕が立ちそうだったから、手を出さなかったんだよ」
「な、なぁ、教えたんだから、出してくれよ」
いや、出さねぇよ!
「はい、これ」
水とパンの入った袋を、ペットゲージの中に放り込む。
「なるべく、忘れないようにはするから」
「……ふざけんなぁぁぁぁ!」




