時間の経過。
地下や洞窟内でもっとも辛いのは、どれくらい時間がたったか分からない事らしい。
こっちの世界にはスマホも時計もないので、時間を確認する方法がないのだ。
私には、女神様が連絡用として持たせてくれたスマホがあるから問題はないが。
それに。
よつばが足を止め、くりんと首を傾げてみせた。
「にあん?」
せりとりゅうたろうも、ちらちらと私を見ている。
「はい、はい。分かりました」
よつばの腹時計は正確だ。
「広い所に出たら、テントを張ってごはんにしようね」
今は夕方くらいだろう。
広場のような場所に出た。
焚き火のあとがある。
せりがふんふんと匂いを嗅ぎ、ぴしっと胸を張った。
サナ達のキャンプのあとだ!
確認したが、すっかり冷えてしまっていて、何日前のものかは分からなかった。
まぁ、いい。
ここを通った事だけは確かだ。
テントを張り、猫達と無限収納の中のドラゴンにご飯を食べさせた。
「さて、私も食べますか」
サナ達を見つけた時用に、スープでも作っておくかな。
パンもハムもチーズもゆで卵も、その他いろいろ詰め込んできたが、もし絶食状態だとしたら固形物はまずいだろうし。
根菜類とレッドバードの肉を煮込み、塩と胡椒で味を整えた。
「うーん」
何度見ても慣れないな……。
ボーショというジャガイモに似た味の芋を入れたのだが、これがどぎついピンク色をしているのだ。
しかも、色が濃いほど栄養価が高い。
煮込むと色素が溶け出して、スープもピンク色に変わっていく。
……味は美味しいんだけどねぇ。
まぁ、いい。
このスープと、パンとチーズで夕食にしよう。
「ふぅ、お腹いっぱい」
食事を終え、猫達も毛繕いなどしながらまったりと過ごしている。
不意に、せりが耳を伏せたイカミミ状態になった。
「気配察知」だ!
「すいませーん、迷ってしまってぇ」
妙に甘ったれた口調で、テントの外から話しかけてきた。
なるほど。
遭難者のふりをした盗賊か。
それにしても、どこにでも湧いてくるもんだなぁ……。
「りゅうたろう、大きくなって」
小声で指示を出す。
「くぅは……」
お腹いっぱいになって眠くなったのか、くぅは面倒くさそうにあくびをした。
「……仕方ない」
一応、ナイフを抜けるようにしておくか。
「ん?」
くぅとは逆に、お腹いっぱいになって遊びたくなったらしいおこんが、外に出ようとしている。
んー、まぁ、いいか。
「りゅうたろう、おこん。行くよ」




