依頼内容。
「炎水晶が見つかったのが、始まりじゃ」
「炎水晶?」
「そうじゃな。うーん……」
ナロクは握り拳を作った。
「炎鉱石がこれくらいだとすると」
次に、両手を大きく広げた。
「炎水晶は、これくらいの力がある」
分かったような、分からんような……。
「つまり、スゴいんじゃ」
「……なるほど」
「サナ達は依頼を受けて、その炎水晶を採掘しに行ったんじゃが……」
「戻ってこない、と?」
ナロクは、こっくりと頷いた。
「予定を一週間も過ぎておる」
……それは、マズいな。
二、三日遅れるのは、まぁ、よくある事だ。
冒険者達も、それを想定して装備を整えている。
しかし、一週間となると……。
「あの子らに、冒険者の心得を叩き込んだのはワシじゃ」
ナロクは、きっと顔を上げた。
「絶対に、無理はせん」
確かに、一緒にキャラバンの護衛をしていた時も用心深く行動していた。
「もしかして、どっちかが怪我をして動けない、とか」
「……そうかもしれん」
優しい子達じゃからな、とナロクは呟いた。
本来なら、怪我人を置いて一度戻ってくるべきなのだが。
サナ達にそれが出来るとは思えない。
まぁ、見つけられれば、チャビの「回復」があるから大丈夫だろう。
知り合いだから、せりの「気配察知」も使える。
ナロクが、私に依頼したのは正しかった。
おそらく、私達以上の捜索者はいないだろうから。
「場所は、どこですか?」
「ここから少し行ったところにある、地下迷宮と言われている場所じゃ」
「地下迷宮……」
猫達はいいが、私には明かりが必要だ。
まずは、装備を整えないと。
「水と食料、明かりと……」
「明かりなら、これを持って行ってくれ」
そう言って、ナロクは手のひらに乗るほどの透明な玉をよこした。
玉の中では、赤々と炎が燃えている。
「炎鉱石で作った明かりじゃ。それ一つで十日はもつ」
「じゃあ、これをあるだけ買います」
「金などいらんわい!」
そう言って、ナロクは袋いっぱいに入った明かりの玉を私に押し付けてきた。
「いや、でも」
炎鉱石で作った魔道具は、結構値が張るのだ。
「サナ達に比べりゃ、安いもんじゃろ」
「……分かりました」
「もう少しワシが若かったら、自分で行ったんじゃが……」
ナロクは、深々と頭を下げた。
「頼む! ワシの子供達を助けてやってくれ」




