指名依頼。
「指名依頼が入って……って、露骨に嫌な顔をしないで下さい」
だって、どうせ、どこかの金持ちの護衛とか、うちの猫達をもふりたい、とかの依頼だろ。
ギルドのお姉さんはため息をついた。
「お気持ちは分かりますけど」
最近、意味のない指名依頼が多くてうんざりする。
フラーの件で、うっかりまた知名度が上がってしまったせいだ。
あの小さな町で英雄扱いされるのが気恥ずかしくて、オパール王国の首都に拠点を移したのもまずかった。
貴族や金持ち連中が、うちの猫達に興味津々なのだ。
中には高値で買い取るとかぬかしやがったやつもいたが、くぅが一声鳴いたら、真っ青になってガタガタ震えながら謝罪してきた。
「でも、今回は少し違うみたいですよ」
んー?
本当に困っているって言うなら、依頼を受けてもいいけど。
「サナさんとナルシさんという方は、お知り合いですか?」
「!」
一緒にキャラバンの護衛をした兄妹だ。
「見せて!」
慌てて、依頼書を受け取った。
指名依頼 《猫を連れた冒険者》。
内容 サナとナルシ戻らず。捜索されたし。
依頼主 鍛冶職人ナロク。
場所 火山都市ガーネット。
……戻らないって、どこから?
ナロクさんって人は知らないけど、サナ達の知り合いなのか?
ガーネットは、確かドワーフ達が住んでいる都市だ。
「……」
サナ達は、普段は護衛の依頼は受けないと言っていた。
なら、討伐依頼か、探索か……。
「どうなさいますか?」
決まっている。
「この依頼、引き受けました」




