特急依頼。
せりが、キャットハウスから顔を出した。
耳を伏せ、全身の毛を逆立てている。
「気配察知」だ!
外が、妙に騒がしい。
まさか。
私とおばあさんは、急いで外に出た。
東の空が、黒い何かで覆われている。
次第に近付いてきているようだ。
まさか、あれ全部……。
「フラーだ!」
「逃げろ!」
「無理よ!」
「逃げ切れるわけがない!」
町の人達が、口々に叫びながら右往左往している。
「つかさちゃん」
おばあさんが、静かな声で私を呼んだ。
「あなたに、特急依頼をお願いします」
「……」
特急依頼。
正式には、特別緊急依頼と言われるもので、非常事態にギルドや国などから出される依頼だ。
本来なら、その場にいる全ての冒険者に出されるものだ。
だが、今この町にいる冒険者は私だけだ。
「退治してくれとは言いません。ほかの街から増援がくるまで、せめて、町の人だけでも……」
おばあさんは、私を見てにっこりと笑った。
「あなたが、《猫を連れた冒険者》でしょう?」
「……」
やっぱり、気づかれていたか。
まぁ、りゅうたろう達を連れてうろうろしていれば、分かる人には分かるよなぁ……。
「分かりました。特急依頼、引き受けました」
「ありがとう、つかさちゃん」
おばあさんは頭を下げると、町の人達を振り返った。
「早馬の用意を! 近くの街まで救援要請を出します!」
凛とした声で、てきぱきと指示を出している。
「さてと」
こっちも始めますか。
「キング、町の東側まで『空間転移』!」
キングがぱちりと目を閉じ、私達はフラーの前に移動した。
「……スゴい数だねぇ」
フラーの群れに覆われ、空は真っ暗だ。
「りゅうたろう、最大!」
りゅうたろうがひらりと肩から飛び降り、大きくなった。
「くぅは……」
ん!?
くぅは、きらきらした目でフラーの群れを見ていた。
…………。
まさかの、狩りモード!?
よく見てみれば、猫達はみんな狩りモードに突入している。
「ええぇぇぇーっ!?」




