空の災い。
せりが、耳を伏せたイカミミ状態で毛を逆立てた。
「気配察知」だ!
「うわぁぁぁ!」
悲鳴だ。近い!
「りゅうたろう、大きくなって!」
肩からひらりと飛び降りたりゅうたろうは、虎ほどの大きさに姿を変えた。
「行くよ!」
悲鳴は、町の外れにある牧場から聞こえてきていた。
駆け付けると、巨大な鳥が牛を襲っていた。
この世界の牛は、向こうより二倍は大きい。
翼を広げた鳥は、その牛よりさらに大きかった。
羽毛は青く、尾羽の先だけが白い。
くちばしではなく、鋭い牙の生えた大きな口がついていて、真っ黒な目は妙に小さい。
「あっち行け! あっち行け!」
牛の近くで、子供が泣きながら木の棒を振り回していた。
「りゅうたろう!」
りゅうたろうは身体の大きさを変えると、鳥に向かって跳んだ。
鳥の首に噛みつき、そのまま地面に押さえ込む。
「大丈夫!?」
「牛が、うちの牛が……!」
牛は身体中に傷を負っていたが、気丈に首を高く上げて立っていた。
そういえば、こっちの牛は気が強いんだった。
ワイルドボアと戦って、勝つ事もあるらしい。
「チャビ、『回復』」
ごろごろと、チャビがのどを鳴らし始めた。
それにしても、見た事のない鳥だな。
少なくとも、猫達のお土産の中にはいなかった。
鑑定スキルを使ってみたが、?マークが出てきただった。
うーん、私の鑑定スキル、レベル1だからなぁ……。
ギルドに持って帰れば、何か分かるかもしれない。
「これは、フラー……!」
鳥を見たおばあさんは、そう言ったきり絶句してしまった。
「フラー?」
「……災いを呼ぶ鳥と言われているの」
おばあさんは、ため息をついた。
「家畜も作物も、何でも食べてしまって。……もちろん、人も」
「!」
「ここ何十年も目撃情報がなかったから、とっくに絶滅したものだとばかり思っていたのだけれど」
おばあさんは、もう一度大きなため息をついた。
「なにより恐ろしいのは、フラーは群れで行動するの」
「群れ……?」
私が見たのは、この一羽だけだ。
ほかのフラーは、どこにいる……?




