凶兆。
やれやれ、といったようなため息が頭の上で聞こえた。
(ミーコさん?)
ああ、夢か、これ。
キジトラ白の小柄な猫が、じっと私を見ていた。
(どうかした?)
ミーコさんは、ついっと私の頭の上を見た。
(上?)
空が、何かに覆い尽くされている。
太陽が隠れて、地上は真っ暗だ。
水は干上がり、草は枯れ、大地はひび割れている。
(?)
声が、聞こえてくる。
「《ことわり》から外れたものよ」
「ううぅぅっ!」
ミーコさんは、空に向かって低くうなった。
「邪魔をするな、……よ」
「んー?」
なんか、変な夢みた気がするんだけど……。
「にゃ!」
「痛い!」
福助が、がぶりと私の手に噛みついた。
「はい、はい。ご飯ですね」
今、起きますよ。
滞在している町には宿屋がなかったので、許可をもらってギルドの敷地内にテントを張らせてもらっている。
猫達にご飯を食べさせ、私も自分の分の朝食を用意した。
牧畜をしているこの町では、新鮮な牛乳が手に入る。
ホットミルクに、スカイビーの蜜を入れると甘い匂いがした。
「りゅうたろう、行くよ」
小さくなったりゅうたろうが、ひらりと肩に乗った。
今日の依頼は、スカイビーの巣の採取だ。
虫除け対策さえしておけば、簡単に採取出来る。
私はターコイズの市場で買った、虫除けが付与された護符をいつも腰からぶら下げているので問題はない。
「あった、あった」
スカイビーは、蔓の先にまんまるな巣を作り、それがぷかぷか宙に浮いているのだ。
私は愛用の草刈り鎌で、蔓を切った。
依頼は五個だったが、すぐに採取出来てしまった。
スカイビーの巣を手に持つと、まるで風船のようにふわふわ浮いている。
「……ダメだからね」
猫達が、きらきらした目でスカイビーの巣を見ている。
おこんなど、すでに遊びモードに入っているようだ。
「オモチャじゃありません!」
早くギルドに帰った方がよさそうだ。
「帰るよ!」
まだ遊び足りなかったのか、猫達は不満そうだったが今日は早めに切り上げる事にした。
 




