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第1話 夜の古城

   

「旦那様、早まってはなりませぬ……。あの御婦人と契ってはなりませぬ……」

 小高い丘にある暗い森を、ヴァルターは馬で駆け抜けていた。

 今時、乗り物として馬を使うのは非常識なのだが……。

 彼が仕える屋敷は、この森を抜けた先にあり、他の交通手段では行き来できないのだ。しかも電話やインターネットも敷いていないため、丘の麓の街と連絡を取るには、昔ながらの郵便に頼るか、あるいは急ぎの場合は、誰かが直接出向くしかない、という環境だった。


 やがて森を抜けて、大きな屋敷が見えてくる。

 個人の邸宅というより、観光地の古城みたいな外観だ。実際、何百年も昔の城がモデルらしい。

 アンツェル家の人間は、もはや当主であるシャルフェンただ一人。執事のヴァルターを含めて住み込みの使用人は数人いるが、それでも不必要なまでに大きな屋敷だった。わざわざ古城をモデルにすることもないのに、これもシャルフェンの懐古主義の一端なのだろうか。ヴァルターは時々、主人に対して呆れに近い感情を抱くくらいだった。


 いわばシャルフェン城とも呼べる屋敷は、ヴァルターが暮らす我が家(わがや)でもあるのだが……。

 こうして、暗い夜空――雲間からわずかな星明かりが覗く程度――を背景にした今、むしろ異様な存在感を醸し出していた。窓から漏れる部屋の明かりも、「まだ起きて待っている者がいる」という安心感を与えるのではなく、逆に「シャルフェンが良からぬ振る舞いをしている最中(さいちゅう)ではないか」という不安を煽り立てていた。

   

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