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ウシナッタモノタチ
クマの避けた頭へと流れ出たものが逆流していく。
十数秒ほどでそれは見えなくなる。
そして何事もなかったかのように――。
「これがここで生きる術だ」
「ウシナッタモノをナキモノにする」
「タマリバに行く前にいた奴をを覚えているか?」
「1番仲の良かったクロですら忘れていた」
「ナキモノとはそういうものだ」
「例外を除いてそのモノの営み全てが"なかったこと"になる」
「もう時間がない」
「持ってるそれでいい」
ウ シ ナ ウ ナ
体が動く。
正しいのかどうかは分からない。
遠くにいたモノがこちらを捕捉する。
鉛のようになった手を上げる。
モノが迫ってくる。
――右腕が頭の横をかすめる。
砂場に木製のバットを叩きつけたような、鈍い衝撃を感じた。