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オオカミノクロ
遠くから声が聞こえる。
「おーいくま坊しょったやつー」
背中で声が反応する。
「くま坊って呼ぶんじゃねえぶっ殺すぞー」
遠くの声はわざとらしく
「くま坊おかえりー」
と返す。
「目玉ほじくり出すぞーこのやろー」
このクマやりかねないなとか思いつつ近くに来たモノを見る。
ツヤツヤした黒い毛並みに思わず見惚れてしまう。
こんな色のオオカミは初めて見た。
「オイラはクロってんだ。覚えやすいだろ?これからよろしくな!」
どうやら悪いやつじゃないみたいだ。
「さてと、盛り上がってるところ悪いんだけど悪い知らせだ」
くま坊は言った。
クロはなぜかさっきのような爛々とした目ではなくなっている。
「教えてくれ、そいつは俺にとってどんなやつだった?」
「あんたとは親友みたいなもんだったと思うよ」
「これはあんたが持ってたほうがいい」
くま坊はそう言って金の指輪をクロに渡した。
クロは思い出したような顔をする。
「ありがとう」
掠れた声でそう言ったクロは吠える。