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クマノナカミ
「なぜ僕を拾った、答えろ」
答えようとする。
――声が出ない
「ボロボロだからって憐れんだの」
冷たく鋭く刺さるその声には怒りと寂しさが混じっていた。
慌てて首を振る。
「何がしたいノ」
――声が出ない。
「目的ハ何」
顔が横から避けて中にドロッとした黒いカタマリが見える。
首を振る。
「コタエロ」
――声が出ない。
顔が完全に裂けた。
死の危険を感じる。
足が動かない。
だんだんとそのクロいカタマリは大きくなりついにカラダを覆う。
コレデオワレル――。
目を閉じかけたその時。
黒いものが消えた。
「なぜこっちに敵意を向けないの」
「もういいよ」
そう言ってクマはカラダをよじ登ってくる。
おもむろにカバンを開け、
――入る。
「ついてくから」
思考が停止する。
「はい進む進む!」
「はい、いっちに、いっちに!」
思わず振り向く。
「はい前見て!」
「いっちに、いっちに!」
訳の分からないまま足を動かし奥へと進んでいく。