ガレキノナカノクマ
光の元にたどり着いた。
カーテンから漏れ出す朝日のようなそれに吸い込まれるように足を踏み入れる。
景色が変わる。
ここはどこだろう。
あたりを見渡すと瓦礫の山がそこかしこにある。
しかし、どこか美しい。
月明かりに照らされ青白く光る。そんな静かな美しさを持っている。
そして、ふと視線が一点から動かせなくなる。
「どうして」
その景色を作っているものの一つに。
「どうしてここに」
何故か自分の鞄が落ちている。
色合いと大きさを気に入ってよく使っていた鞄。
それがどうして。
手に取り自分の肩に恐る恐るかける。
しっくりとなじむ。
中を確認する。何も入っていない。
そのことに少しホッとしたような残念なような。
歩く。
木の棒があった。
おもむろに手に取る。密度が高くしっかりしているのがわかる。
バッグに入れる。
歩く。
クマのぬいぐるみだ。
ぼろぼろで薄汚れている。そのまま去ろうとするがどうにも気になるのでこれもバッグに入れる。
歩く。
唐突に後ろから殺気を感じる。
後ろを振り返っても何もいない。
強く感じたそれが今度は背後に移る。
思い出したようにバッグからクマを取り出す。
異様な雰囲気を醸しているそれは、
本来動く筈のないそれは、言葉を放つ――。
「なぜ僕を拾った、答えろ」と。