7 魔素流れ
お腹がすいた。今も昔も腹時計は正確だった。
とりあえず、昼ごはんを食べるという習慣がこの体に染み付いているのか、食べる時間だと思う。
時計の表記は前と同じでなので、数字は違うが理解出来る。
ちょうど12時だ。
とりあえず、この体には腹ごしらえが必要みたい。
しかし、魔力がないばあちゃんが何の力を使ったんだろう?
聖女さまの浄化魔法?高潔な清廉なと言える力は神様や聖女さまの力に近いのではないか?
前世で聖女さまの力を見た記憶はないよな?記憶はない…?
ばあちゃんの魔力は感じなかったし…
とにかく、あの場所とばあちゃんの祈りをもう一度観察しなくちゃならない。
台所に行く。
誰もいない、あれ?もしかして昼ごはんって昨日がたまたま?やっぱり昼ごはんって習慣はない?いや、ななの記憶ではあった。
ふと何かの違和感を感じる、僅かな魔力?魔法が発動しないくらいの魔力を庭の方から感じる。
バタバタと部屋を横切り、庭に面したガラスの引き戸を開ける。
ばあちゃんとじいちゃんがいた。ばあちゃん達は何かを扇いでた。
確かうちわ?ばあちゃんの前にある置物から煙が昇る。
そこから魔力が仄かに立ち揺らぐ、その煙の行方を目で追うと固まった。
なぜ気付かなかったのだろう。
大きな魔素流れが空いっぱいに広がっていた。
口をあんぐり開けてしまう、腰を抜かさない自分を誉めたい。
あまりに大き過ぎて、分からなかったのか…そこに在るのが当たり前過ぎて理解してなかったのか…
「ななちゃん?」
ばあちゃんが心配そうな顔が視界に入る。
「お腹ペコペコ!」
いけない、心配かけてしまう、慌てて何もないみたいに振る舞えた?
嘘が下手な自分を知っているので、話を変えるのが一番だ。
「それなに?」
ばあちゃんの前にある煙を出す置物を指差す。
「ああ、じいちゃんが魚釣ってきてくれて、七輪で焼いているんだよ。焼おにぎりも作るから、ちょっと待ってね」
引き戸の下に台があり、履き物があったので、ブカブカだが履いて庭にでる。
「うちわ?」
「そうだね、炭を燃やして、うちわで空気を送って、よく焼けるよにしているんだよ」
ななの記憶にはない、じいちゃん魚釣れるの?
近づいてみると、目が点になった。
魚から僅かな魔力を感じたのだ。
魔物?イヤ、魔石は今朝の焼き魚にはなかった。同じ種類の魚に見えるのに。