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ななとサトシ君達は怒られた。
子供は水をかけるのは顔以外らしい…祭りで子供同士で掛け合って、興奮して何回も顔面に桶を投げつける事故が起こり、小学生以下は顔に水掛け禁止になったようだ。守らない悪ガキが多くて毎年怒る大人がいるらしいが…
あれ?去年も俺はサトシ君達に水を顔に掛けられたけど?
今年も俺を狙って…ななに返り討ちされた…
「おっちゃん、さっきから聞いてると、なんで私が怒られる?」
ななが説教する大人に無表情で見る。
「私は見学者のスペースにいたのに、こいつらが水をかけてきたから、同じ事をやり返しただけだ」
「ダメなもんはダメだ!ルールだ!」
頑なな大人に、ななは淡々と言う。
「そんなルール、知らん。こいつらルールを知っている参加者、私ルールを知らない見学者。なぜ?同じように怒る?お互い顔に掛けたからチャラだ。
それに見学者に掛けるが一番ダメだ!こいつら泣いて許されたように見える。
私が一緒に怒られる、私と同じ理由、こいつら思う。だが、怒る理由、同じか?」
「うっ」
おっちゃんが反論出来ず言葉に詰まる。
「こいつら怒られるのは自業自得、私も同じ?」
「そうよ!去年もその子達アキラの顔に水をぶっかけたのよ!去年も怒られたのに、又やってるのよ!それに見学者に掛けるのがまずダメよ!」
姉ちゃんがおっちゃんに言った。
「反省が足りないから今年もした?」
さっきまでの穏やかな空気からゆらりと空気が変わる…ななが怖い…ななの声が低くなる…
「さっき、掛けたのは去年のアキラへの水、今年の分は未だ掛けてない……そこにいる見学者にも水を掛けようとした水を…」
キレイな顔の人が怒るのは怖いな…サトシ君達もおっちゃんも後ずさる。
「ひっゴメン!悪かった!」
「私にじゃなく!」
声を荒げてないのに、ななの声が耳に刺さる。
「ゴメンアキラ!後ろの人達もゴメンなさい!許してください!」
サトシ君達は謝ってくれた…
「こいつどうにかして!」
しかし、その後俺を盾にしながら逃げるから、笑えてきた…
そんなに痛かった?
そうか…サトシ君達も痛くて泣いてた…5歳に成り立てだった子供なら、泣いても当たり前かも…
「もう良いよ…なな、水は顔はダメだって」
ななが不服そうな顔でサトシ君達を見てる。サトシ君は必死に叫ぶ。
「それに、お前のかけた水は痛かったぞ!もう充分返してもらった!」
「やっぱりお前ら反省足りない。私一人、バケツ1つ、お前ら三人、バケツ3個 数も揃えるか?」
「だって、痛かったんだよ~お前本当に女か?スゴい馬鹿力!他の奴等にかけられるより、絶対三倍くらい痛かった!」
ケンちゃんが叫ぶとナオ君とサトシ君がコクコクとうなずく。
ななは呆れた顔を三人に向ける。
「反省がみられない…」
ななが一歩足を出す。
「うわ!逃げろ!」
三人は逃げ出して、あっという間に人混みに紛れた。
「ふん」
ななは追いかけなかった。絶対メッタメッタに叩きのめすと思ったけど…
おっちゃんは言い過ぎたと謝りながら離れて行った。ななの勝ちだ…
「ななちゃんカッコいい~ステキ!」
姉ちゃんがウルサイ…
「アキラもありがとう、カッコ良かったよ!」
え?俺も?
「あきらも私達に水をかけないように前に出てくれたでしょ!カッコいいよ」
回りのオバチャン達も俺たちを誉める。
ようやく、初めて水掛にも今年ちゃんと参加出来たと実感出来た。