27 秋祭り
神社の階段をアキラがかけ上がる。
回りに人がいっぱいいるから危ないだろ!
「おい、早く来いよ!」
なんと言ったか?笛や太鼓のお囃子だったか?耳に突き刺さる。
私はノロノロと階段を上がる。アキラがウキウキとした顔で怒鳴る。
「早く、早く!」
ため息を噛み殺し、境内に入る。
高いやぐらを広場の真ん中に設置し、そこから広がる紐に赤色の提灯を至るところにぶら下げている。
屋台がずらりと回りに並んでいて、こんなに人が島にいたのかと驚く。
人の多さに来たことを後悔した、帰りたい…
「お前のばあちゃん何処にいる?小遣いせびりに行こうぜ!」
「ばあちゃん?知らん、」
「えー知らねえの?嘘だろ!何で知らねえの!」
来るつもりはなかったからとしか言えないな…
「しょうがない、探すぞ!」
こいつを誰かに押し付け、帰ろう。誰なら良い?
「おい、アキラ!」
あっ源さんだ。良い所に来た。
捻りハチマキを巻き法被を着た白髪交じりの厳つい顔の源さんが、アキラのじいさんとはとても思えない。
アキラはお父さん似?見たことがないアキラのお父さんを想像する。
「おっ、ななちゃんじゃねぇか、アキラ、おめぇすげえ、なななちゃん連れ出したか!偉い偉い!」
なんだ?なんで私を連れ出したとアキラを誉める?私はアキラを押し付けて帰るつもりだったのに…
源さんはアキラの頭を撫でまわすと、アキラは胸をはりニヤニヤ笑う。
源さんはアキラにななちゃんと一緒に使えとお金を渡し、さっさと人混みに行ってしまった。
「ありがとう、じいちゃん!良かったな!これで何を食う?」
アキラはへらへら笑う。仕方ない、次に出合った奴にアキラを押し付けよう。
「まずは焼きそばだ!」
アキラはぴょんぴょんと跳ねながら屋台に向かう。こいつを一人で行動させてはダメそうだ。回りが見えてない…
人にぶつかりそうになるので、アキラを引っ張る。
「危ない」
仕方がない、アキラの手を引っ張り人を避けて、焼きそばの屋台に来る。
「ここで良いか?」
アキラはコクコクうなずき、お金を払い、焼きそばを買った。
ハフハフと焼きそばを食べてる。
「ほら、お前も食えよ!」
えっお前の食いさしを? 半目で思わず睨んでしまった。
「俺あとたこ焼きと、わたあめと、リンゴ飴食べたい!」
もしかして、これからお前と分け合うのか?そこまでの仲ではない。
「腹が減っているなら、それを食え!私は別にいらない。」
とたんにアキラがシュンとなる。
「これ全部食べたら他が食べられない…兄ちゃん達は一緒に回ってくれないから…」
クッなんだ?こいつは?みんな体よく私にこいつを押し付けた?
なんか、本当に帰りたくなった…
しかし、捨て犬みたいなショボくれたこいつは厄介だ。
「アキラじゃないか~最近俺達と遊ばなくなったと思ったら、こんなチビと遊んでいるのかよ!」
後ろから声がかかる、アキラの知り合いか?
振り返ると、小学生くらいの男の子達が三人立っていた。
「サトシ君」
アキラが嬉しそうに名前を言った。真ん中に立つ、つり目の男子がサトシかな?
その子がアキラに対して苦々しい顔だ。
「なんで最近来ない!」
「えっ?前運動会の練習があるから一緒に遊べないって言ってたよね?」
「いつもそんなこと言われても来るだろ。今日も来ないし!」
「えっ行って良かったの?」
ああ、サトシはアキラが最近まとわりついてこなくて寂しかったのか…
そういや、最近アキラはお母さんにもまとわりついてたようだったしな…
こいつにアキラを押し付ける?
「だけど、今日は母ちゃんに、ななを頼まれているから…ななも一緒で良い?」
「なんだよ、こんなチビが一緒?ななって女だろ?こんなガキが一緒って嫌だよ」
うーん、こんな嫌な言い方されるのはシャクだが…
「私は帰るけど…」
「なんだよ、せっかく来たんだから!ななを一人にさせるのはダメだから、俺はななといる!」
あっ余計にややこしくなった?