20 アキラのお母さん
最近、やたら構ってくる子がいる。
身体強化のお守りが完成して、釣りが出来るまで、お守りの力を安定的に実験出来るようになったのに…
テトラポットから落ちそうになったり、変に怒ったり、お腹が空いてないのに魚を食べたり、あまり良い事をしない。
源さんの孫じゃなきゃ、家に来たとき庭から追い出してたよ。
しかし、カスミばあちゃんの家のお隣とは驚いた。
お地蔵様に近いとは知らなかった。
港で何回も会っている源さんは魔素には全然影響受けてなかった。
こいつも影響はない、お隣さんならあのお姉さんが図鑑のお姉さんか?今度お礼を言おう。
確か孫は3人って言ってたな?
6人家族か?源さんとパパさんとママさんと孫3人。
突然走り出したアイツは車に轢かれそうになり、事故防止の魔方陣が作動する所を見せてくれた。
うん、作動してるとは知ってたが、こんな風に風魔術が作動し、対象物を絡めとるとは…魔方陣に風魔術なんか組み込んだっけ?
やっぱりこの世界での魔術の作動は少し違う?
考えていると、まだアイツはへたりこんでいる。
「ななちゃん、アキラちゃん助けてあげて」
えーきっと大丈夫だよ?
カスミばあちゃんの笑顔に負けて、アイツに近づき手を掴むと、カスミばあちゃんの家の隣を目指した。
しかし、アキラの足元がおぼつかない、なんだよ、こいつ、しっかり歩け!
ここだろな?家の前に付くと、玄関にアキラのお兄ちゃん?とお母さんらしき人が立っていた。
「おはようございます、アキラ君そこで、車にびっくりした。」
「え?びっくり?」
中学生らしいソバカスだらけの元気そうな男の子が、アキラのお兄ちゃんだって分かる顔でつぶやいた。
「源さんのカズキお兄ちゃん?」
「あっそうだけど、アキラがびっくりしてこんなにヘロヘロなのか?」
「横 速い車 ピューって、私 北田七海美で。源さんから本、ありがとうございます。」
横で眉を一瞬ひそめたおばちゃんがニッコリ笑った。
「やっぱりななちゃんなのね?近くで見るとやっぱりべっぴんさんだね。わざわざ連れて帰ってくれたのかい?ありがとう。」
「アキラと同じ年かよ!しっかりしているな~それにひきかえアキラはヘタレだな!
…じじい?本?ああ、あんなん見てるのかよ?小学校前だろ?よく見るな~」
「ほら、早くあんたは良いからさっさと学校行きな!」
「分かっているよ!」
そう言って、カズキ兄ちゃんは自転車に乗り行った。ちゃんとお兄ちゃんに本のお礼を言えた。なかなか機会がなく言えなくて、言えて良かった。
お兄ちゃんは魔素の影響は受けてなかった。
しかし、アキラのお母さんは大したことないが少し入っている…
アキラがようやく動きだし、ギクシャクと家の中に入っていった。
「こら!アキラ!お礼を言ったのかい!」
アキラのお母さんは量が大したことないが、魔素が気になる…
「じゃあ、又来ます。さようなら。」
私はそう言って、アキラの家の前から出て行った。
「ななちゃん、本当にありがとう、又来てね~」
とりあえず、お地蔵様の掃除終わっているかな?掃除をしてから、どうするか考えよう。
最近の日課になりつつある家への帰り道、バケツや釣糸を隠していた藪から拾い上げ、テトラポットを目指す。
やっぱり朝がよく釣れる。潮の満ち引きもなんとなく分かってきた。
じいちゃんが教えてくれないから、源さんにこっそり聞くと教えてくれた。
今日のこの時間帯が満ち潮らしい、波を見て、釣るか決める。
最近、収納の魔方陣のお守りを完成した。
収納出来るようなって、多く釣れた魚を時止めができ、保存がきくようになった。
さらに紙に書いた魔方陣も収納して、匂わないし、他に臭いもうつらない、嬉しい。
波を見ると、今日は柵の手前から分かるくらい、波が激しく打ち付けている。
ん~無理か~残念。
仕方なく、家に帰る。
さて、優先順位は?アキラのお母さん?次は帰還の魔方陣?
匂いに辟易してつい、収納の魔方陣を優先してしまったのがダメだったか…
今日くらいの波なら帰還の魔方陣完成してたらチャレンジしていたかも…
いやいや、そんな出来なかった事を考えても無駄だ。
さっき見たアキラのお母さんの魔素は多くはなかった。置いておいても大丈夫なくらい?にも見えたが…
とりあえず、除去の方向で考えよう。
お守りを渡す必要もない。もし、触れるなら1~2回で除去できそうだった。
では、金剛石で吸収のみ?
しかし、殆ど話したことない人の背中なり、私が手を握って除去出来るか?
うーん、難しい…離れた場所からの魔術の発動が無難だか…
クッー難易度が高過ぎて、ジタバタしたくなる。
私は魔術師ではない、錬金術師だ!
離れた場所に魔術をかけた記憶はない…