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カスミばあちゃん目線

私はずっと、胸が苦しかった。何時からなんかは分からないけど、ずっとだ。

この土地に生まれ育ち、お父さんと一緒になり、子供が5人生まれたが、一番偏屈な息子が島に残り連絡船の乗務員となる。

それ以外の子は島を出て、なかなか会うこともなかった。


同居の息子が結婚して、孫が生まれた。がむしゃらに育てた孫は男の子一人で、すぐに島を出て行った。


お父さんが亡くなってから、ほとんど一人で家にいる。


淋しい…淋しさで胸が苦しくなるのだろうか…


そんな時に不思議なあの子に会った。


なんか吸い込まれそうな不思議な瞳をした、こんな所に似つかわないキレイお姫様みたいな女の子だ。

あの子のお母さんがこの前此処で亡くなった。


北田さん?って言ってた年配の女性とななちゃんという小さな女の子は、ほぼ毎日見かける。

時間は決まってないが、ここからは少し離れた家だと聞いているから、本当によくやる。


しかし、近所の私が暇をもて余しているのに、掃除くらいはしておこうと、朝の掃除が習慣になった。

お地蔵様に毎日、挨拶も掃除もしてなかったが、やってみると、良いもんだ。

ここは事故が多いから嫁は止めとけと言う、しかし、私がどうなっても大したことにゃならないだろうし、毎日朝に掃除する。

そうすると、ここを通る学生さんやらが挨拶してくれるようになった。


そして、久しぶりにあの子を見た。髪が短くなって男の子みたいになってた。でもやっぱりキレイな顔立ち。

一人で来て、掃除を一緒にしてくれるようになったのだ。朝早くても嫌な顔せず、黙々と掃除をしてくれる。


無口な子だから、私が耳が遠くても気にしなくて良い。

何回も聞き直すのは辛い。

私が独り言みたいな言葉にもうなづいたり、反応してくれる優しい子だ。


しかし、ある日お供えを持ってきた私を狙う、野良猫を一睨みで追いやったり、驚くような事をする。


咳をしたら、あの子が背中を撫でてくれた。

暖かい…こんな風に撫でられたのはいつぶりだろう?


胸が苦しいのが楽になる。


ちょっとすると、小さなお守り袋を渡された。内緒だって、なんで?


貰ってから、家に帰り覗いてみると、キレイなガラス玉が入っていた。

とても小さな女の子が持っているような玩具みたいな代物じゃない、きっと内緒で大事なお守りを持ち出したんだ。


しかし、預かってから体が楽だ。日に日に楽になる。咳は出るが、出る度に胸が軽くなる。なんだろう、気のせいか頭もスッキリしてくる。


咳が続くから嫁に病院につれてこられたら、妙に大騒ぎになった。


本土の病院に連れてこられて、肺に影があるからって、色々な検査をされた。

でもお陰で全然会えてなかった子供達にも会えた。

数時間だけだったが、みんな疲れた顔してやって来た。

こんな顔してたっけ?そうか、みんな頑張っているんだね…


こんな機会でしか会いに来ないバカな子供達は元気な私に呆れるやら、怒るやら、笑うやら…


又来るって言って其々に帰って行った。本当に慌ただしいね~

それ以外は最初は検査くらいしかなくて、退屈だった。


まあ、なんだかんだと、看護婦さんやら、結核菌が見つからなかってからは入院している人が相手になってくれたから退屈はしなかたっし良かった。


退院してからは孫が帰って来てくれて、根気よく相手をしてくれた。

耳が遠いから、写真を見せてくれたり、良く聞こえないけど、歌を歌ってくれたり。

なんだかんだと、あっと言う間だった。


咳が落ち着くと孫は帰って行った。

又今度来る時には彼女連れてこいって言っておいた。


久しぶりにななちゃんに会った、私の手を握ってくる。


暖かい…ああ、なんだか嬉しい、ななちゃんに会えて。


お守りを返さないといけないらしい。


残念だけど、死んだお母さんかお婆ちゃんの大事な物だと思う。

神様に帰すって言って、何処のお守りか知らないみたいだし…


お守りを持つとななちゃんは後光がさしたように後ろから日の光を受ける、光の加減かもしれないが、とても神々しい…


ありがとう、ななちゃんに会えて私は心と体を助けて貰った。


神様の生まれ変わりなんかじゃないかと思えるくらい、ななちゃんの存在に感謝できる。

ありがとう。


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